株主の皆様へT
  ● 商品・技術開発力の向上

マツダの商品開発の目標はマツダのブランドDNAをいかに私たちの商品に盛り込んでいくかということです。このDNAがお客様の満足度を向上させ、マツダブランドに対するお客様の「思い入れ」を形成していきます。商品開発ならびに生産工程においては、マツダDNAを「クオリティー・ビジョン」と「デザインポリシー」からなる明確な「プロダクトフィロソフィー(商品理念)」で表現し、いくつかの具体的な特性に分類しています。決算終了後まもなく導入いたしましたプレマシ−、新型MPV、新型ボンゴには、この新たなDNAが盛り込まれており、今後のマツダ車にはすべて受け継がれていきます。

 その他の当期の成果として、マツダ・デジタル・イノベーション(MDI)が更なる進化を遂げたことがあげられます。MDIの進化は、コスト削減、品質向上、開発期間の短縮につながり、車両開発ならびに生産工程の効率化に大きく貢献してきました。新型ファミリア(323)、ロードスター(MX-5)、プレマシー、MPVなどの新型車の開発・生産にあたっては、MDIの進展により、開発効率が著しく向上し、開発期間を大幅に短縮することができました。

 マツダの技術開発面でのもうひとつのチャレンジは環境にやさしく、安全性の高い車両を開発することにあります。環境問題に対する対応としては、マツダは量産するパワートレインにおける技術革新を地道に図っていくことが最大の効果を生むものと考えます。当期には、国内ならびに欧州向けカペラ(626)と欧州向けファミリア(323)に、直噴ディーゼルエンジンを搭載した車種を導入し、好評を博しました。今後は、直噴ガソリンエンジン、VVT(バリアブル・バルブ・タイミング・エンジン)、CVT(コンティニュアスリー・バリアブル・トランスミッション)等主要技術の導入を検討しています。

 また、平成10年8月には当社の防府西浦工場がISO14001を取得いたしました。マツダは広島地域のすべての拠点(広島工場、本社すべての部署、三次テストコース、関連会社7社)で、2000年6月までにISO14001を取得する計画を発表しており、このような地域すべての拠点でISOを取得する計画は、国内自動車メーカーでは最大規模のものとなっています。マツダは「社会に認められる商品は地球環境にやさしい商品」を車づくりの原点としており、今回の取り組みは、社会的責任に対する一企業市民としての認識を表明する重要なステップと考えています。その他の活動としてはリサイクル活動に注力しており、年間約2,000トン(高さ8メートルの木材にして約4万本分)の紙のリサイクルを達成しました。

対話3 世界トップクラスの安全性を確保することも、環境問題同様、研究開発活動において重要な課題です。たとえば、高剛性安全ボディー「MAGMA」(海外市場ではMazda Advanced Impact-energy Distribution and Absorption Systemと称しています)は、MDIによるデザイン及び生産技術から生み出されました。MAGMAは、前後からの衝突エネルギー吸収分散させるクラッシャブルゾーンを設けることにより、高剛性安全ボディーを実現しました。このMAGMAは、世界初の頭部保護機能付SRSエアバックシステムとともに、1997年後半の新型カペラから採用されています。

 また、マツダでは高性能ドライビングシミュレーターの開発により、さまざまな状況下での運転者の反応と車両の挙動を分析することができるようになりました。このほか車両通行帯内の歩行者や車両を感知し、衝突を回避するシステム等の開発に努めています。

 最近の例としましては、ボンゴフレンディが自動車事故対策センターによる前面衝突安全性能試験の結果、運転席ならびに助手席とも最高ランクのAAAを獲得しました。

●マツダ・フォードの経営資源の有効活用

平成11年秋で、マツダとフォードとの間で資本関係が結ばれて20年となります。この間、両社は異文化の壁を越え、お互いの力を有効に活用することにより、協力してさまざまな相乗効果を生み出してきました。

 例えば、両社の商品開発活動はマツダ・フォードの「プロダクト・サイクル・プラン」のもと調整・整合されており、この最初の成果が2000年後半からマツダの工場において生産を開始するマツダ及びフォードブランドの右ハンドル仕様SUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)です。また、両社は環境保全や安全の分野を含むさまざまな研究開発活動をはじめ、調達、生産、流通の分野での相乗効果を最大限に追求しています。

 平成10年5月には、マツダとフォードの合弁生産会社であるオートアライアンス(タイランド)社が新型Bシリーズピックアップトラックの生産を開始しました。また、同社は、同年11月より、同工場で生産されたピックアップトラックのオーストラリア及びニュージーランド向け輸出を開始しました。今後、80カ国以上の市場への輸出を計画しています。

● 人材資源の活性化

昨年のアニュアル・レポートでも強調しましたように、企業の成功はそこで努力する人々の成功によって達成されるものです。言い換えれば、従業員こそがマツダの最大の資産ということになります。経営陣の役割は、これらの優れた資質を持った人材を効果的に指導し、いかに優れたサービスの提供、販売促進や財務体質の向上、また環境保全や社会への貢献に結びつけていくかということです。

 マツダでは、現在一人ひとりの社員がそれぞれの能力を最大限に発揮できる職場環境作りに努力しています。新しい企業文化の発展に伴い、人事制度も大きく変容しつつあります。平成9年には、職場での実績や能力を基に昇進できる新たな人事制度を導入しました。この結果、今回の役員人事においては、マツダでは過去最年少である41歳の取締役が誕生しました。

 今後ともすべての従業員に対して、各人が成長し、マツダの成長に貢献できる機会を公平に提供していく考えです。このために、従業員を教育し、成長させ、活性化させる数々の施策を展開しています。来年度には、グローバルレベルでの厳しい競争に勝ち抜いていくための技術習得を目指した新たな教育プログラムを導入する予定です。

将来に向けて

世界の自動車業界を取り巻く環境は、巨大メーカーの合併や戦略的な提携で明らかなように、今後、一層の競争激化が予想されます。このような環境の下で、事業の更なる成長を果たし、収益性を確保していくためには、事業のすべての局面において効率性を極限まで追求していかねばなりません。

 来るべき21世紀においては、革新的な経営と堅実な成長を通して、マツダは以下のような企業になるべく努力していきます。


  • 安定した、かつ収益力のある成長のための明確なビジョンを持つ企業
  • 常にお客さまの期待を上回る革新的な商品を提供する企業
  • 常にお客様に最高の満足を提供し、ブランドに対する数多くのファンを持つ企業
  • すべての社員に対して、彼らの多様性を認め、公平に機会を提供できる企業
  • 社員の優れた資質と能力を通じて環境保全、安全性の確保、地域社会への貢献をめざす企業

今後とも、マツダの変革を実行し、株主の皆様のご期待に応えるよう努力いたしますことをお約束させていただきます。

                                       サイン
  代表取締役社長・CEO
  ジェームズ・イー・ミラー
                                          
集合写真 50000
将来に向けて更なる成長が図れるかどうかは、二つの基本ビジネス要素にかかっています。ひとつは従業員の努力によっていかに成功を勝ち取るかであり、もうひとつはマツダの企業イメージとブランドイメージを強化、育成していくことです。

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