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第1517号 1997年12月3日

マツダ(株)、燃料電池電気自動車「デミオFCEV」を開発

−水素と酸素の化学反応で発電し、CO2やNOXを
排出しない環境に優しい次世代電気自動車−

マツダ(株)は、水素と酸素の化学反応によって電気を発生させる燃料電池システムを「デミオ」に塔載した電気自動車「デミオFCEV」を開発した。同社は、12月5日(金)から9日(火)まで京都府総合見本市会館に於いて通商産業省などが主催する「エコ・ジャパン’97」に、この車を出展する。

デミオFCEV
デミオFCEV

「デミオFCEV」は、燃料電池スタック、水素燃料を貯蔵する水素吸蔵合金タンク、酸素(空気)を供給するエアーコンプレッサーを主要構成部品とする燃料電池システムと、加速時の出力を補完するウルトラキャパシタ、車両駆動用モーターなどを搭載している。

マツダの燃料電池システムの特長は、これまで必要であった空気加湿器を省くことでコンパクトにできたことである。燃料電池の運転には、発電を行うセルの内部にある電解質膜を常に水分を含んだ状態にしておく必要があり、従来は燃料電池に供給する水素と空気を加湿していた。同社では、化学反応による発電過程で生成する水を活用することで、燃料電池スタックの体積の約15%を占めていた空気加湿器を不要とした。また、加速時の出力補助として採用したウルトラキャパシタは、一時的に電力を蓄え、瞬時に大きな電力が供給できるのが特長である。

「デミオFCEV」の目標性能は、最高速度が90km/h、航続距離が一回の水素充填で約170kmである。同社では、この車を基に走行性能、制御システム、エネルギー効率の評価などを行い、今後の燃料電池電気自動車に関わる研究課題を明確にする。

燃料電池電気自動車は、バッテリーに蓄電した電力を使う従来の電気自動車と異なり、燃料電池で発電しながら電力を供給する次世代の電気自動車である。水素を燃料とするため発電時の生成物が水だけでCO2を発生しないうえ、燃焼を一切伴わないためNOXも発生しない。さらに、内燃機関と比較して熱によるエネルギー損失が少なく、エネルギー変換効率が高い。しかも、従来の電気自動車に不可欠であった多量のバッテリーが不要になる。現在、多くのメーカーが次世代の代替自動車用動力の有力候補として、燃料電池電気自動車の研究開発を進めている。

マツダは、水素ロータリーエンジンや燃料電池の研究開発に見られるように、水素エネルギーに早くから着目してきた。同社はこのほかにも、排出ガス低減や燃費向上によるCO2排出の低減、代替燃料・クリーンエネルギー車の研究開発、リサイクル推進など、環境問題への取組みを積極的に推進している。

燃料電池システムの開発の一部は、通商産業省工業技術院の石油代替エネルギー関係技術実用化開発費補助金を受けて進めている。

デミオFCEV モータールーム
モータールーム

デミオFCEV 走行写真
デミオFCEV

以 上
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