ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)そのためには技術の進化の方向性については究極の姿を描くことに尽きるだろう。それに向けてチャレンジすれば他社がどう進むかそれほど気にする必要はない。ただしそれを実現していくには多くのそして大きな技術課題を克服せねばならない。そして商品として我々がお客様に提供する価値はどこにあるのか,数値的に競うところで勝つことを常に求められるがそれだけではエンドレスの競争に引き込まれ疲弊するだけだろうし,そのうち有意差はなくなり優位性を競う意味もなくなる。この解を見つけることこそが企業としての一番重要なことであろう。技術もその実現手段の一つと考えるべきである。それが明確だったのがアップル社であるといえる。誰かが一生懸命考えるというのは答ではないはずである。企業としてのより正しい解は将来に向かうための技術や我々の提供する価値についてより多くの人が考え続けられるような環境を作ることだと思う。そのためにはやると決めたことはいかに少人数で効率的にやるか,そして効率化できた分だけ人材を将来に向けて回すような仕組み,それをみんなが目指している状態にすることだと思う。ここでマツダ技報の初刊が出たころと比べて開発のやり方はどう変化したかを見てみる。当時のエンジンは排気量が違ってもバルブタイミングなどは同じであり,燃料供給や点火時期制御も機械的なキャブレター,機械式進角装置等であり,全て実験的に決めていた。CAEといっても有限要素法を用いた構造計算程度であったと記憶している。今では厳しい排ガス規制対応,飛躍的に高まりつつある燃費改善や性能改善要求への対応等で諸元を決めるまでに検討すべき項目も指数関数的に増大しており,試行錯誤の繰り返しでは到底多くの機種開発などは望むべくもない。しかしIT技術が進化し,燃焼解析や信頼性解析,大規模NVH解析等,当時は考えられないことであったが今では開発のなかで当然のごとく使われるツールとなりつつある。我々はこれをモデルベース開発と呼んでおり,SKYACTIV技術開発もかなりの割合をモデルで開発した。今後の企業の開発,生産はこのモデルベース開発にかかっていると考えている。やると決めたものはモデル上で開発をしてしまいその後試作して検証だけで終える。新技術さえもモデル上で有効性を検証することで開発サイクルが縮小可能であるし,アイディア検証も大きく効率化できる。このようにして人材や資金を将来に向けることが正しいとする風潮を作ることが企業を永続させるための重要な条件であると考える。今後マツダ技報が刊を増すごとにSKYACTIV技術とモデルベース開発が進化していくものと予想して巻頭言としたい。―2―