ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)1.はじめに自動車部品の軽量化及びコスト削減を達成する手段として,周辺部品の機能統合や一体化によってVE(ValueEngineering)を図る機能統合型モジュール化が進み,モジュール基材も樹脂材料を使用して軽量化の取り組みが多く見られるようになった。マツダではガラス長繊維強化ポリプロピレンの高い強度と射出成形の形状自由度を両立する新たな射出成形技術を開発し,2002年よりフロントエンドモジュール及びドアモジュールの基材として実用化してきた。軽量高強度な樹脂材料の適用から,高い形状自由度を生かしてブラケット類との一体化,防水機能の統合などによって重量低減及びコスト削減を達成している。しかしながら,近年のCO2排出量削減や原材料費の高騰不安などといった背景から,モジュール基材やその他の硬質プラスチック部品の更なる軽量化及び材料費低減が必要となってきている。これを達成するアプローチとして,素材そのものの高強度化・高剛性化による薄肉化とともに,発泡成形技術による低比重化が注目されている。マツダは,超臨界流体(supercritical fluid ,以下SCF)を発泡剤とし,コアバック法と組み合わせて気泡構造をコントロールする独自の射出発泡成形技術を開発し,高発泡倍率で低密度な中心層と,微細発泡によって機械物性を保持した表層を有するサンドイッチ気泡構造を形成することで,ドアモジュール基材において20%以上の材料削減と実用性を満足する性能を両立させる基礎技術を確立した。今回これをCX-5のドアモジュール(Fig.1)に採用することを決定し,詳細仕様の確定と検証を実施した。CARRIER ASSY-MODULEFig.1 CX-5 Door Module混合させている。一般的に,ガラス繊維の含有量が大きいほど,剛性・強度は高くなる。一方で,製品質量や原材料費が高くなり,成形時の流動性や成形後の寸法精度が悪化することが知られている。これまでの開発経過から,発泡成形技術を用いた場合,剛性・強度いずれも従来品同等以上の性能を得られることを確認している。発泡成形技術を採用するにあたり,その軽量化と原材料費低減効果を最大化するため,ガラス繊維含有量を従来比以下とすることを目標として,これまでの検証結果を踏まえ,ガラス繊維の混合率を23%に決定した。2.2非発泡領域の設定発泡成形技術を用いた場合,板厚方向の寸法は従来品より大きくなり,またその精度も出し難い。ウィンドレギュレータなど,モジュールに装着する装備品で従来成形のモジュール板厚に合わせて寸法が標準化されている締結部や,高い寸法精度が求められるシール面など,発泡成形技術を同時に適用することが困難な部位が存在する。そこで,1つのドアモジュール内に発泡させる領域とさせない領域を設定することとした。具体的には,コア型を2分割した上で,コアバックさせる領域とさせない領域を設定することにより,必要な部位において従来品と同等の寸法と精度を確保した。3. CX-5採用に向けた検証3.1側面衝突性能の適合性検証(1)基本物性からの影響予測材料強度やシャルピー衝撃値の物性値が変化すると割れる部位や大きさが変わり,側突性能に影響する。しかし,材料の物性値は,曲げ弾性率,曲げ強さ,シャルピー衝撃値においていずれも等価以上になることを確認しており,側突性能には大きく影響しない見通しを得ていた。一方で,等価以上になると,側面衝突時の破壊モードによるモジュールの破断箇所などが変わり,トリム破壊へ影響を及ぼし,衝突ダミーへのエネルギ入力が大きくなるなどの懸念があった。(2)試作品による先行検討従来成形品と発泡成形品でユニット評価を実施し,比較評価を行なった結果,発泡成形品ではモジュール締結部の座面が抜け,従来品よりも低い荷重で破壊が発生するため,締結部の周辺形状の剛性アップと応力集中させない形状への変更が必要となった(Fig.2)。2.詳細仕様の決定2.1ガラス繊維含有量の決定従来の成形法によるドアモジュールでは,必要な剛性・強度を確保するため,ガラス繊維を25~30%程度―110―