ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

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概要

マツダ技報 2012 No.30

マツダ技報No.30(2012)3.高圧縮比化への対応3.1高圧縮比化の狙いと課題燃費改善のため,まず,熱効率改善に着目した。理論的に圧縮比を上げるとエンジンの熱効率は良くなる。これは膨張比が上がることで,燃焼ガスがピストンを押す期間がより長くなり,燃焼エネルギがより多く運動エネルギに変換されるためである。このため,圧縮比14(日本/北米仕様は13)を目標とした。これまで高圧縮比化を拒んでいた障壁は,1)ノッキングによるトルク低下2)プリイグニッション発生によるエンジン破損など,異常燃焼に関わる課題であった。(プリイグニッション回避技術については,デミオのSKYACTIV-G 1.3から織り込み,マツダ技報No.29にて紹介しているため割愛する。)BSFC (g/kWh)20g/kWhScatter band measured by 3rd party(λ=1:0%exht.EGR 2000rpm/200kPa)Positioning ofSKYACTIVBase enginemeasured by 3rd party15%(2) SKYACTIV-G 2.0(CX-5)これに対し,SKYACTIV-Gの最終目標は前述の通り,「燃費と出力性能をそれぞれ同時に15%向上する」ことである。燃費性能のため,デミオのSKYACTIV-G 1.3同様,圧縮比を14とした。しかし,低速トルク含め,出力性能も同時に向上させるためには,低回転から高回転までの全高負荷域にわたり,ノッキングを抑制する必要がある。更に,組み合わせるトランスミッションなどを含めた市場展開性,機種展開性を考慮して,デミオとは違う手段で高圧縮比化と出力向上の両立を達成するというアプローチが必要であった。ノッキングの抑制には,圧縮比上昇に伴う筒内温度上昇を抑制することが有効と考え,筒内温度の低減を図ることとした(1)。4.排気系改善Fig.2は,2,000rpmのトルク目標に対するロードマップを示している。圧縮比を14とし,直噴効果を含む燃焼改善効果(7%)と排気系改善効果(8%)により,ベース比15%のトルク向上を達成する計画とした。そのためには,排気系の機能強化と,車両搭載のための大幅なブレークスルーが必要であった。本稿では新設計した排気系を中心に説明する。500 1000 1500 2000 2500 3000SKYACTIV-GEngine Displacement (cc)Torque (Nm)20NmBase engine95RONScatter band measuredby 3rd party0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000Engine Speed (rpm)Fig.1 Positioning of SKYACTIV-G (1)3.2ノッキング対策のアプローチ(1) SKYACTIV-G 1.3デミオに搭載したSKYACTIV-G 1.3は,特に燃費性能を重視し,圧縮比14のエンジンと低回転高負荷の使用頻度の高いCVTと組み合わせている。このため,高負荷域のノッキング発生の回避を目的に,Cooled EGRシステムを採用した。これによって,走り(出力)を維持し,高圧縮比エンジン本来の熱効率を発揮させることで,ハイブリッド車並みの燃費を実現した(3)。Fig.2 Roadmap to Achieve the Torque Target (2)4.1排気系開発コンセプト排気系の基本機能はエンジンの燃焼ガスを燃焼室内から「静かに(減音)」,「きれいに(浄化)」,「スムースに」排出することである。SKYACTIV-Gでは目標を達成するため,特に「スムースに」排出する機能を改善,強化した。具体的には,・4-2-1排気系を用いた気筒干渉抑制と脈動掃気の活用・排気抵抗の低減(従来比‐20%以上)に取り組んだ。残留ガスを低減し,筒内温度を低減することでノッキングの発生を抑制する。それらに排気脈動を活用して,更に多くの残留排気ガスを引き出すことで,エンジンの充填効率の向上を目指した。(1)気筒干渉抑制筒内温度低減のため,他気筒からの排気圧力波の到達により発生する気筒干渉を抑制し,残留ガスの排出不良を回避する―4―