ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
No.30(2012)マツダ技報なってくる。例えば高トルクに対応する場合は巻線数を増やす必要があるが,一方の高回転域ではその増やした巻線と永久磁石によって大きな誘起電圧が発生して所望のトルクや回転数に到達できないことがある。またその逆の高回転域でのトルク,回転数を達成するために巻線数を低減すると低速での高トルクを発生できないことがある。一つのモータで銅損と鉄損のトレードオフを探り,この高トルクと高回転の要件を両立させることは可能ではあるものの,その際は高効率な運転エリアが縮小する傾向となる。本開発では一つのモータでこれらの要求性能を満足させるための手段として巻線切り替え技術を用いている。その内容について述べる。Fig.1に本開発で採用した電子式巻線切り替えの概念図を示す。UUTorqueTorqueMotor speedTorqueHigh torqueLow speed typeLow torqueHigh speed typeHigh efficiency areaHigh efficiency areaHigh efficiencyareaMotor speedOne Conventional MotorTorqueHigh torqueHigh speed typeHigh efficiencyareaMotor speedDeveloped MotorNeutral AMotor speedTwo Conventional MotorsVLow speed windingWVNeutral BHigh speed windingWFig.2 Torque-Speed Characteristic of the Traction MotorFig.1 Conceptual Diagram of the Electric Winding Change開発したモータは永久磁石同期モータであるが,そのステータ巻線は回転数に応じて電子デバイスによって巻線数が選択可能な構造となっている。具体的には高速用と低速用の二つの中性点を備えておりこれを切り替えている。例えば低速回転時はスター結線の中心側の中性点A(Neutral A)を導通させて全巻線を使用し高トルクを発生する。これを低速巻線(Low speed winding)と称する。一方で高速回転時にはそれぞれ三相の巻線途中の中性点B(Neutral B)を導通させて短い巻線のスター結線を構成し,ロータ内の埋込永久磁石による誘起電圧の影響を低減して高回転特性を実現している。これを高速巻線(Highspeed winding)と称する。これら低速巻線,高速巻線はそれぞれの使用範囲で高効率となるように設計されており,巻線切り替え機構で両巻線の高効率部分を連結することにより従来の永久磁石同期モータよりも広い回転数範囲で高効率なモータドライブが可能となっている(Fig.2)。2.2巻線切り替え機構の小型軽量化本開発以前の巻線切り替えシステムは内部の電子デバイスの振動耐久性を考慮してそれらを許容環境下であるインバータ内部に搭載していた。これにより,Fig.3のNeutral AとB,それらにつながる電力ケーブルインバータ内に引き込むことになりケーブル本数が増えるため筐体が大きくなり重量も増加していた。MotorInverterUV WNeutral BThree-phase ACNeutral AFig.3 Motor-Drive Structure of Previous System一方デミオEVでは航続距離改善の観点から巻線切り替え機構をモータ側に搭載することによってシステムの小型軽量化を図っている(Fig.4)。デミオEVでは,モータの振動環境の見極めを行い巻線切り替え部の耐久性向上を図った。実際に耐久試験路を走行し,その振動波形を計測しFFT解析および頻度解析を行ってモータ振動要件の定量化をした。そしてその振動環境下で十分な耐久性を確保するため電子デバイスの軽量部品への置換を進めた。また比較的重量のある部品は耐久性―121―