ブックタイトルマツダ技報　2012 No.30

概要

マツダ技報　2012 No.30

マツダ技報No.30(2012)(2)電流位相の最適化低バッテリ電圧状態下での低速巻線から高速巻線への切り替えにおいて,モータ電流が過渡的に変化する原因は弱め磁束制御の追従性が低いためである。その弱め磁束制御の位相に直接関わるd軸電流(id)電流の応答性の改善を行った。具体的にはdq軸電流算出ブロック(d-q currentcalculation block)に電流位相最適化を図るための弱め磁束補正ブロック(flux-weakening offset block)を追加した(Fig.11)。このブロックは高速巻線に切り替わった際の電流位相角を予測しておき,切り替わった際に瞬時に補正するフィードフォワード制御である。それはdq軸電流算出ブロック(d-q current calculation block)から出力される低速巻線d軸電流値指令値(id ref1)にd軸電流位相補正(id ref2)を加えて高速巻線側のd軸電流指令値(idreference)を生成する(Fig.12)。TorquereferenceBat voltageCalculating iqid ref1Calculating idd-q current calculation blockIfilterflux- w eakening offset blockiq referenceid referenceid ref2Fig.11 d-q Current Calculation with Flux-WeakeningOffset Block on Changing Winding“Low”to“High”i0200A/1divCurrent reformedWinding changed200ms/1divFig.13 Motor Current after Turning the Flux-WeakeningOffset Block4.あとがきこのたびのデミオEVのモータドライブシステムは(株)安川電機と共同開発したものである。電子式巻線切り替え方式を採用して,かつ巻線切り替え時のトルクショックを抑える制御技術を織り込むことにより,小型高効率でスムーズな走行を可能にするモータドライブシステムを開発することができた。今後もこの技術を発展させ環境への負担が小さい車両開発を通じて社会に貢献していきたい。参考文献(1)若山ほか:ハイドロジェンREハイブリッドシステムの開発,マツダ技報,No27,pp.31-35(2009)tHighLowqiq reference■著者■θid ref2id ref1did referenceFig.12 Motor Current Vector Diagram of Each WindingStatus at Changing Winding佐藤隆之新冨将克瀬尾宣英弱め磁束補正ブロック(flux-weakening offset block)を追加した場合のモータ電流波形を示す(Fig.13)。巻線切り替え直後にモータ電流が瞬時に立ち上がっている状況が確認できる。これは切り替え直後に高速巻線の回路定数に合致した電流に供給できていることを表している。また実車においてもトルクショックを感じさせない切り替えができていることを確認できた。―124―