ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
No.30(2012)マツダ技報3.バッテリパックの性能3.1基本性能EVにおいては車両を駆動するエネルギ源がバッテリのみであるため,バッテリの性能が航続距離・加速性能といった車両の基本性能に大きな影響を与える。デミオEVでは,“Zoom-Zoom”な走りと航続距離を両立するため,高エネルギ密度のバッテリパック設計としている。Table 1にセルの主要諸元,Table 2にバッテリパックの主要諸元を示す。デミオEVのバッテリパックは20並列,96直列のセル(総セル数:1,920個)で構成され,パックとしての公称電圧は346V,公称容量は58Ahである。高エネルギ密度なセルの特長とパック内でのバッテリの最適配置により,パックとしてのエネルギ密度は体積当たりで125Wh/L,重量当たりで89Wh/kgと業界トップレベルの水準を実現している。Table 1 Specifications of Battery CellCell type18650 typeNominal voltage3.6VNominal capacity2.9AhEnergy densityOver 600Wh/LTable 2 Specifications of Battery PackWeight225kgVolume160LNominal voltage346VNominal capacity58AhNominal energy20kWhEnergy density89Wh/kg125Wh/LMax power89kWMax current300AOperating temperature-20℃~60℃3.2耐久性リチウムイオンバッテリは長期間使用していく中で徐々に劣化し,容量が低下していく。EVではバッテリの容量劣化がそのまま車両の航続距離の減少につながるため,バッテリの耐久性確保が重要になる。バッテリの劣化モードは充放電サイクル劣化と保存劣化の2種類があり,これらの複合でバッテリの耐久性が決まる。また,バッテリの劣化現象にはセル内部の化学的副反応(電極表面での皮膜形成等)が深く寄与していることから,劣化度合いはバッテリの使用温度にも大きな影響を受ける。一方,EV車両としてのバッテリの使われ方は(a)走行(力行・回生による放電・充電の繰り返し)(b)車両充電(普通充電・急速充電)(c)車両放置(ガレージでの駐車等)のパターンがあるが(Fig.5),(a),(b)での劣化は充放電サイクル劣化,(c)での劣化は保存劣化に相当する。SOC(b) Charging(a) Driving(c) ParkingTimeFig.5 Pattern Diagram of SOC Changeそこで,EV車両用途としてのバッテリ耐久性検証として,市場走行を想定した充放電パターン,車両充電相当の充電及び保存を組み合わせ,温度を劣化加速因子として取り入れた複合劣化サイクルテストでバッテリの容量劣化を評価した。結果をFig.6に示す。リチウムイオンバッテリにおいては電極表面での皮膜形成が容量劣化の大きな要因であることが多数報告されている。この場合,容量劣化は皮膜の形成速度に起因して経過時間や充放電サイクル数の平方根に比例するが,本テスト条件においてもバッテリの容量は設定した複合劣化サイクルのサイクル数の平方根に比例して劣化していくことが分かった。この関係性を用いて劣化を予測すると,実用的な走行距離及び耐用年数において顕著な容量劣化がないことが示唆され,EV車両用途として充分なバッテリ耐久性の目処がついた。Capacity retention[%]Target√cycle numberFig.6 Capacity Retention in Combined Degradation Cycle3.3安全性(1)安全性確保の考え方リチウムイオンバッテリは可燃性の有機電解液を使用しており,エネルギ密度が高いことから不適切な使用方法で使用すると,発熱・発火の可能性がある。そこで,車載適用する場合はパックシステムとして安全性を確保することが重要である。Fig.7にパックシステムにおける安全性確保の概念図を示す。デミオEVのバッテリパックにおいては,セル製造・検査工程での管理を徹底し,異常発熱等につながるコンタミによる内部短絡等の不良セルの流出防止を行うことはもちろんであるが,それに加えて,―127―