ブックタイトルマツダ技報　2012 No.30

概要

マツダ技報　2012 No.30

マツダ技報No.30(2012)・セルでの基本的な安全性確保・バッテリマネジメントシステム(BMS)による適切な制御とフェイルセーフ・バッテリパック構造による保護という考え方でパックシステムとして安全性を確保している。Protecting cells from external factorbattery pack structurebattery cell・quality control・Securing cell safety at abusebatterymanagementsystemAppropriate battery controland fail-safeFig.7 Concept of Battery Pack System Safety(2)セルでの安全性確保Table 3にセルでの安全性試験項目例を示す。今回採用したセルの過充電,外部短絡,圧壊といった異常状態に対する基本的な安全性を確認している。Table 3 Example of Battery Safety TestItemResultExternal short circuit○Forced Internal short circuit○Overcharge○Heating○Crush○Impact○(3) BMSによる制御とフェイルセーフデミオEVのバッテリパックでは全セルブロックの電圧監視,各モジュールでの温度監視,電流・電圧情報に基づくSOC(State of charge)推定等バッテリの状態を常時正確に把握して入出力を適切に制御するシステムを開発し,外気温やユーザの走り方といった非制御要因がある中でもバッテリが過充電・過放電・異常高温といった異常状態に陥らないようにしている。また,バッテリ自体や付随するセンサ系に異常が発生した場合においても,故障を自己診断し適切な制御を行うシステムとしている。(4)パック構造での安全性確保①外部衝撃からのバッテリ保護外部からの衝撃に対して内部のバッテリモジュールを保護することがパック筐体の重要な役割である。車両衝突時の衝撃対策として,車両前面・側面・後面いずれの方位からの衝突に対しても最も有利な車両の中心(前後輪軸間及びフロアフレーム間)にバッテリパックを配置している。これにより衝突相手物(車両や壁等)及び搭載物(モータ等)からの衝撃荷重を作用させない配置にすることができた。万が一衝撃荷重が作用した場合でも内部のバッテリモジュールが破壊されないよう,バッテリパックの外周はすべて閉断面のフレーム構造をとし,衝撃に対する充分な強度を確保している。②類焼防止構造何らかの理由で万が一セルが発火した場合,セルからは高温のガスが噴出する。デミオEVのバッテリパックではこの高温の噴出ガスを適切に排気し,高温ガスの熱が周囲のセルに伝わらない構造とした。また,各セル間距離を適切な距離に設定することで発火セル自身の熱が周囲のセルに伝わりにくい構造としている。以上のような構造上の工夫で,万が一セルが発火した場合でも周囲のセルへの類焼を防止して,パックとしての安全性を確保している。4.バッテリマネジメントシステム4.1バッテリマネジメントシステムの概要Fig.8にバッテリマネジメントシステム(BMS)の構成を示す。BMSは電流センサ,バッテリモジュール内のセル電圧及び温度を計測するCMU,電流センサ及びCMUからの情報に基づきバッテリの状態を判定し,車両ECUに送信するBCUで構成されている。CMU‐BCU間,及びBCU‐車両ECU間の通信にはCANを用いた。ModuleCurrent sensor・・・CMU・・・CMUBatteryCANBCUVehicleECUVehicleCANFig.8 Configuration of Battery Management SystemデミオEVの車両全体のシステムとしてはBMSのバッテリ情報を基に車両ECUがエネルギマネジメントを行うことから,BMSでのバッテリ状態判定の正確さが車両全体の挙動・性能に大きな影響を与えることになる。以下,BMSの代表的な機能について説明する。―128―