ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

No.30(2012)マツダ技報4.2 SOC(State of charge)推定リチウムイオンバッテリはバッテリ温度,SOCによって入出力特性が大きく変化する。またSOC精度の良し悪しによって使用可能SOC範囲が制限され,バッテリの実使用エネルギも制限を受ける。以上のことから,EVの車両性能を確保する上で,正確なSOCを推定することが重要である。SOCは電流値を積算することで以下の式から推定される。SOC? SOCn n?1?100バッテリ容量??Idtしかし,この電流積算法のみでは以下の懸念がある。・電流センサのオフセット等による電流積算誤差が時間とともに拡大し,SOC推定精度が低下する。・制御電源OFF時のバッテリの自己放電に起因するSOC減少に対応できない。一方,リチウムイオンバッテリではバッテリの開放電圧(OCV)とSOCに相関性があり,OCVを推定することでSOCを推定することが可能である。(OCV推定法)そこで,デミオEVのBMSでは電流積算法とOCV推定法を状況に応じて最適に組み合わせたSOC推定ロジックを構築した。Fig.9に車両走行時の充放電パターンにおけるSOC精度検証結果を示す。上記ロジックでSOCを推定した場合,8時間以上の長時間にわたる連続充放電においても,実用上充分な精度のSOC推定ができることを確認できた。ることから,発生した故障によって車両制御を,車両停止,制限走行等にレベル分けし,故障が発生しても可能な限り安全に走行できるシステムとしている。4.4セルブロック電圧均等化デミオEVのバッテリパック内には96直列のセルブロックがあるが,使用状況によって,各セルブロック間の電圧にバラツキが生じる場合がある。電圧バラツキが生じた場合,充電側では最も電圧が高いセルブロックに,放電側では最も電圧が低いセルブロックに充放電が制約され,パック全体としての使用可能容量が制限される。この現象を抑制するため,各セルブロックの電圧を計測し,必要に応じてセルブロック電圧を均等化して,パック全体としての容量を最大化できるシステムとしている。5.まとめデミオEV用に,18650型セルを用いた薄型バッテリモジュールを最適配置するとともに,独自のバッテリマネジメントシステムを開発することで,高エネルギ密度と信頼性・安全性を両立したバッテリパックシステムを成立させることができた。本バッテリパックを車両フロア下に配置することで,車室空間を制限することなく航続距離200km(JC08)を実現した。今後も航続距離の更なる伸長,価格の低減といったEVに対する社会のニーズに答えるためバッテリシステムの技術開発を進めていく。参考文献(1)久米ほか:次世代バッテリマネジメント技術の開発,マツダ技報,No.28,pp.54-58(2010)SOC(%)SOC(estimate)SOC(reference)Battery voltageVoltage(V)■著者■0 2 4 6 8 10Time(hr)Fig.9 Time Charts of SOC Estimation松井恒平喜田裕万栃岡孝宏4.3故障診断デミオEVのBMSではBCUがバッテリ内の各種情報を判定し故障診断を行う。以下に代表的な故障診断項目を示す。・バッテリ自体の異常(電圧異常,温度異常等)・センサ系の異常(電流センサ,電圧センサ,温度センサ,絶縁抵抗センサ)・CAN通信異常・高電圧回路の絶縁抵抗低下なお,各故障によって車両安全性に与える影響度が異な―129―