ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

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概要

マツダ技報 2012 No.30

マツダ技報No.30(2012)Vehicle VelocityMotor Real TorqueBrake Pedal PositionAccelerator pedal PositionTorque MapDelayCompensatorRateLimiter+ FilterTarget TorqueTire SlipControllerMotorControllerVehicleWheel SpeedFig.3 Drive Torque Controlどに起因するモータトルク指示に対する実際のモータトルク出力の遅れを補正することで,アクセル操作と車両加速感のつながりを向上させている。これらの制御パラメータを,シミュレーションと実車実験によって最適にチューニングすることで,アクセル操作に対するリニアでスムーズな駆動トルク応答を実現し,EVにおける”Zoom-Zoom”な走り感を具現化した。また,このモータのトルク制御系にはタイヤスリップを抑制する制御も織り込んでいる。これはタイヤの空転を検出してモータトルクを抑制する制御で,駆動時のみではなく減速中の回生トルクでタイヤの空転が発生した場合でも最適なトルク制御を行い,安全な走行を可能としている。2.4充電制御電気自動車のバッテリ充電は,内燃機関の燃料補給に相当し,充電の簡便性が車両の利便性に大きく影響している。デミオEVの充電システムは,車載充電器を用いた200V電源による充電とCHAdeMO規格(国内の車両・充電器メーカが参画する協議会で決められた,電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッドカー(PHEV)の充電に利用する急速充電方式の共通規格)に対応した急速充電器を用いた充電に対応し,いずれの場合も定電流充電を基本として,VCMが充電電流およびバッテリ冷却システムを制御して充電を行う。急速充電器による充電では,VCMは充電器の電流と同時に必要に応じて車両のエアコンを制御してバッテリを冷却しながら充電することで,バッテリの保護と充電時間の短縮を両立している。この制御は,1次元シミュレーションツールであるAMESimを用いて充電と冷却によるバッテリパック全体の温度変化をモデル化し,これを用いて充電電流とバッテリ冷却を最適化した。2.5遠隔操作制御デミオEVではスマートフォン・PCから遠隔で車両の状態のモニタ,充電開始/停止,空調開始/停止を行う機能を実現した。この機能では,スマートフォンやPCのWebブラウザで現在の車両状態をモニタできる他,時間を指定して充電や空調を開始することができる。例えば午後10時に「9時間後に空調開始」と予約指定することで,翌朝快適な室内温度となった状態で車両に乗り込むことができる。システムはユーザインタフェースとなるWebブラウザと,車外サーバ,車載通信ユニット(DCM, Data CommunicationModule)とVCMで構成される(Fig.4)。ユーザの操作はインターネット網や携帯電話通信網を介して車外サーバに一時保存され,指定された時間に携帯電話通信網・DCMを経由してVCMに送られて実行される。実行の結果は逆経路でユーザに連絡される。本機能では意図しない充電・空調起動を防止するため,ボンネットが開いている・シフトがPレンジ以外であるなど,危険が予測される場合にはユーザの要求は実行されない。また電池に残った電力が少ない場合は空調の運転を禁止あるいは中断し,思わぬ電力不足を防止している。Web BrowserSmart PhoneInternet LineWeb BrowserPCCell PhoneNetworkData Center ServerCell PhoneNetworkData CommunicationModule (DCM)Vehicle CANElectric Air ConditioningA/C ECUOn Board ChargerVCMFig.4 Remote Control System3.制御系の開発On BoardCharger ECUEV-CANA/C Control3.1 MBDを活用した制御システム開発これまで述べてきたような,ガソリン車にはないモータ駆動系制御や高電圧制御を搭載したVCMの制御ソフトウェアを,高い信頼性を保ちながら効率良く開発するために,制御対象と制御器をモデル化して制御開発を進めるMBDを活用した。特に,車両全体を制御するVCMでは,その制御プログラムを更に機能別にサブプログラムに分割した上で,その相互関係を「模式化」「見える化」してつながりを明確に定義して,大規模な制御プログラムをサブプロ―132―