ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)実車両と同様にCANで接続して制御開発を行うことで,①各コントローラ間の微妙な通信タイミングEVシステムの起動・遮断シーケンスなど②システム間の制御連携や干渉フェイルセーフ挙動の他システムへの影響有無などが机上で確認できるようになると同時に,実世界では再現の難しい様々なフェイルなどを網羅的に考慮したテストシナリオに基づいて検証することで,高品質な制御を効率的に開発することが可能となった。High Voltage Battery HILSOpticalFiberCableHigh VoltageBattery ModelsHigh Voltage BatteryECUMotor HILSMotor ModelsInverter ModelsDriveTrain ModelMotor/InverterECUOpticalFiberCableDriver ModelsVehicle ModelsCharger Models(On Board / Quick)EV-CANVCMVehicle HILSFig.7 Entire vehicle HILSQuick Charger-CANMeterVehicle-CAN4.デミオEVのフェイルセーフ4.1フェイルセーフの概要電気自動車の制御はバイワイヤシステムとなるため,フェイルセーフには特に配慮する必要がある。デミオEVにおける制御系のフェイルセーフは,内燃機関車両制御系のフェイルセーフをベースとして,充電を含む高電圧系とモータ駆動系に拡張したものになっている。デミオEVでは電気の供給や走行の指示は高電圧/駆動制御系のCANを経由して送られる制御システムとなっており,フェイルセーフではCAN信号に対する故障診断に特に注力した。このCAN信号に対する故障診断は,(1)相互監視:ユニットごとの制御器が相互に出力を監視し故障を検出する,(2)故障診断結果共有:故障を検出した場合,その故障を他のユニット制御器と共有しシステム全体に影響を与えない,(3)通信異常:CAN通信自体の状態を監視し故障を検出した場合システムを安全な状態へ移行させる,などの機能を備え,車両全体の状態を監視・故障の検出を行っている,故障を検出した場合,VCMは故障の重篤度に応じて車両を以下のフェイルレベルに移行させると同時にユーザにその状態を提示して対応を促すことで,安全を確保すると同時に利便性の低下を最小限にとどめている。レベル4:警告灯点灯レベル3:制限走行(トルク抑制)レベル2:走行禁止(高電圧供給継続)レベル1:高電圧供給を遮断4.2フェイルセーフの検証デミオEVの制御系は,VCMを中心に構成されており,フェイルセーフにおいてもVCMを中心とした検証を進め,全てのVCM入出力とCANで接続されたユニットを対象として,フェイル時の動作を検証した,更に,連続して発生した複数の故障に対しても,数万通りの故障組み合わせをリストアップし,(1)故障検出の独立性:最初の故障が発生しても問題なく次の故障が検出できること,(2)故障検出の影響性:最初の故障の結果が影響して他の故障を誤判定しないこと,の観点から確認が必要な約4,000通りの組み合わせを抽出して,HILS・実車を用いて独立性と影響性を検証した。5.まとめデミオEVの制御システムについて解説した。制御系は車両全体を制御するVCMを中心として構成されており,アクセル操作に対するリニアでなめらかな駆動トルク応答により,エンジン車両との違和感がなく,かつ,電気自動車らしい走りで“Zoom-Zoom”を具現化した。この制御プログラムはMBDを活用して開発を進め,万一のシステム故障に対しても,車両を安全に制御できるように,車両全体をHILSによって再現した動作確認も行ってフェイルセーフを検証した。参考文献(1)前村明彦:埋込み磁石形同期電動機の電子巻線切替えによる速度範囲の拡大方法,平成22年電気学会産業応用部門大会,p.II-93-96(2010)■著者■福庭一志浦本征吾吉末知弘岡本篤畠山未来三戸秀樹大佐古昌和末冨隆雅―134―