ブックタイトルマツダ技報　2012 No.30

概要

マツダ技報　2012 No.30

No.30(2012)マツダ技報2.開発コンセプトデミオEVは現行デミオのデザイン,居住性を維持しつつ(Fig.2),現行デミオのプラットフォームにEVシステムを搭載することで“Zoom-Zoom”な走りの進化とともに,従来同等の信頼性と実用安全の確保に加え,高電圧からの感電防止構造の構築を目指した。成された場合に発生する。主として閉回路が構成される状況は以下のような場合である(Fig.3)。・高電圧+/-の活電部分両側に直接接触した場合・高電圧部の絶縁抵抗低下時に露出導電部に間接的に接触した場合When someone contacts to to "+" "+"When someone contacts to to the theand "-" of the high voltagehigh voltage during thedirectlyinsulation resistance fallFig.2 DEMIO EVFig.3Situation with the Danger of an Electric ShockデミオEVにおけるワイヤハーネス開発の注力ポイントは以下である。・感電安全設計・活電部の直接接触保護・露出導電部の間接接触保護・高電圧ハーネスの絶縁・衝突時の感電安全設計・EVプラットフォームの構築・EVプラットフォーム・充電インレットのパッケージング3.感電安全設計3.1感電に関する安全思想電気自動車をはじめとする高電圧機器や高電圧ハーネスを搭載する車両には,感電等に関する法規が定められている。マツダにおける感電安全の統一安全思想は,市場はもちろんのこと,取引先様も含めた社内外の人々には感電に対する知識はないという考えのもと,・予見や回避行動は期待しない。・“うっかり”行動は考慮の範囲内とする。ことを前提としている。マツダはお客様をはじめ,サービスマン,生産ライン作業者,開発者,消防レスキュー関係者,警察関係者など,いかなる人々にも感電させないための施策を講ずることが自動車メーカとしての使命と捉えて,施策を以下のように定めた。・構造的な安全確保を最優先とする。・1つのミスや故障では感電に至らない配慮をする。・電動化車両に接触する全員に教育,啓蒙を実施する。高電圧の感電は,人体を介して電流が流れる閉回路が構デミオEVでは,法規要件の適合に加えて他に1つ以上の構造的な感電防止策を講じる二重系保護を基本として設計することとした。二重系保護とは2つ以上の防止策が失陥しないと,上記に示すような人体を介した閉回路が構成されず,感電には至らない配慮をした設計のことである。3.2感電安全設計の重要性デミオEVの開発では,先ずワイヤハーネスの機能をFMEAで徹底的に見つめ直し,網羅的に故障モードが及ぼす影響を確認することから始めた。その結果,高電圧ハーネスの故障による影響で最も重大な事象が「感電」であり,感電防止は商品の基本品質として考慮すべき性能であると捉えた。感電は「故障」のみに起因して発生するとは限らず,開発段階から生産,物流,お客様の使用,サービス,廃却など時系列的な検証に加えて,人為的なミスやイレギュラな使用や作業も想定した検証にて,あらゆる感電シーンを洗い出す必要がある。マツダでは高電圧ハーネスも含めた高電圧システムについて感電をTop事象としたFTAにて網羅的に感電シーンを洗い出して,必要な施策を実施した。内容は設計的な感電防止構造の採用,絶縁保護具着用等の作業要領の教育,マニュアル等多岐にわたる。3.3具体的な設計の考え方設計的な感電防止構造は,主としてワイヤハーネス単体の信頼性確保と,車両の実用に耐え得るパッケージングを確保することである。特に衝突安全性能はその性能の大部分がパッケージングで決まるため,デミオEVの開発では先ず必要な衝突安全性能を満足するパッケージングを成立させることから着手した。―141―