ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

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概要

マツダ技報 2012 No.30

マツダ技報No.30(2012)的費用を最小化する対策を行い,生活の豊かさを最大化していくことが,自動車の使命であり,自動車を製造販売する企業の命題である。2.2自動車安全の取り組み視点近年の世界の人口増加率は年率1~2%であるが,世界の自動車保有台数の増加率は,年率2.5~3.5%で,自動車の保有台数は一貫して人口を上回る拡大を続けている。こうした世界規模での自動車普及の潮流の中で,世界保健機構(WHO)によると,交通事故による死亡者数は,世界全体(2004年)で130万人,負傷者数は2,000~5,000万人に達する。更に,2004年時点で世界の死亡理由の2.2%(第9位)であった交通事故は,2030年には3.6%に上昇し死亡原因の5位になるという予測もされている(3)。世界的視野で,交通安全対策を考える必要がある。過去,日本においても交通事故死亡者が16,000人を超える交通戦争と表現される時期があった。こうした問題は,自動車が普及する過程で,その普及スピードに人々の安全感度(安全希求水準),自動車の安全性能,道路インフラの整備や交通ルールの整備が伴わすに発生したものであり,交通安全の取り組みは,自動車利用者・製造者・社会が協調し,「人・クルマ・道路/インフラ」の3つの視点で総合的な取り組みを進める必要がある。2.3自動車安全対策の今後の課題日本の交通事故対策政策として,昭和46年以降5年ごとに策定されてきた交通安全基本計画では,重要課題として交通死亡事故対策が継続的に掲げられた。前述の「人・クルマ・道路/インフラ」の3つの視点から,道路整備やシートベルト義務化,アンチロックブレーキやエアバッグの自動車安全装備の普及など様々な交通安全対策が講じられ,着実な改善が進んだ。その中で,平成13年の第7次交通安全基本計画以降は,交通事故被害対策だけでなく,重大事故そのものの低減にも意識が向けられ始め,予防対策への期待が強まってきた。一般に,事故の背景的構造は,ハインリッヒの法則で説明され(Fig.1),自動車事故に関してもこの法則概念が当てはまる。この法則に基づけば,重大な事故を予防するためには,背景的に潜んでいる軽微な事故自体を減らす取り組み,すなわち,事故という結果に対して防衛する対処的視点から,事故原因を取り除く原因的視点が重要になる。つまり,これから我々に必要とされる安全への取り組みは,世界規模の視点を持った上で,各国の自動車普及実態(道路交通環境や人々の安全意識,提供する自動車の安全性能)を理解し,原因的対処を継続強化していくことであると考えている。1Serious accidents29Slight accidents300Minor accidents but a "close call"Fig.1 Heinrich's Law3.マツダの安全への取り組み3.1マツダの安全性能向上についての基本的な考え方マツダとしても,交通安全対策に必要な「人・クルマ・道路/インフラ」の3つの視点での取り組みを行っている(Fig.2)。本紙では,クルマからの安全への取り組みを説明する。Fig.2 Viewpoint to SafetyFig.2に示した視点での取り組みを基本的な土台としながら,2007年にサステイナブル“Zoom-Zoom”宣言として,『マツダ車をご購入いただいたすべてのお客さまに「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を提供する』ことを掲げた(Fig.3)。これは交通安全という多面的かつバランスのとれた総合的な取り組みが必要な課題に対し,まず,マツダ自らが主体的に行動できるところから(クルマ作りを通して),全てのお客様に優れた安全性能を提供していくという意味である。このメッセージには,安全技術の先進性は磨き続けるとともに,世の中に普及してこそ価値を発揮する安全技術について,お客様や社会への受容性(経済性や機能性)の向上を行い,技術普及を目指していく意志が込められている。―146―