ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

ページ
158/264

このページは マツダ技報 2012 No.30 の電子ブックに掲載されている158ページの概要です。
10秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

マツダ技報 2012 No.30

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

マツダ技報 2012 No.30

No.30(2012)マツダ技報4.3事故のリスク/被害を軽減する技術「事故のリスクを軽減する技術(プリクラッシュセーフティ技術)」として,万が一事故が避けられなくなった場合に,運転者および同乗者の被害を緩和させるためにクルマ側からの被害軽減方法として緊急時の自動ブレーキ技術も市場導入している。どの市場でも発生頻度が高い追突事故の多くは,低速走行時のドライバの不注意や油断によって発生している。スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)は,上述の状況で前車への追突が回避困難な状況になった場合,クルマ側が自動的にブレーキをかける技術である(Fig.8)。この技術が機能する制動能力範囲は限定的(低速度域)ではあるが,雨天時にも安定的に機能する技術であり,かつ安価で普及を目指せるシステムである。力鋼板を使用し,軽量化を追求するとともに高い衝突安全性能を実現した(Fig.9)。このような「もしも」の際にドライバや乗員を守る技術についても地道な技術進化を行い,CX-5では米国IIHS(注釈※1)のトップセーフティピック2012や,ユーロNCAP(注釈※2)で最高評価の5つ星を獲得した。また,新型ロードスターでは,スポーツカーとしてボンネットを低く抑えたデザインを維持しながら,万が一の事故の際に,ボンネット後端を瞬時に持ち上げて,エンジンとボンネットの間に衝撃を吸収する空間を確保し,歩行者の頭部への衝撃を緩和する「アクティブボンネット」(歩行者保護システム)を開発して,同車へ初採用している。Fig.9 SKYACTIV-BODY注釈※1:Insurance Institute for Highway Safetyの略。安全Fig.7 Front View Improvement by A-pillar Form性評価を行っている米国保険業界の非営利団体。注釈※2:New Car Assessment Programの略。世界各国で実施されている,新しい自動車の衝突安全をはじめとする安全性を評価・公表する自動車安全性テスト。5.おわりに(今後の展望)Fig.8 Smart City Brake Support4.4万が一の事故の被害を軽減する技術「万が一の事故の被害を軽減する技術(パッシブセーフティ技術)」として,各国・各地域の法規で定められている条件だけでなく,道路上で発生しうる様々な状況を想定した衝突実験を行い,乗員保護の技術を着実に進化させている。CX-5以降順次適用していく新世代の軽量・高剛性「SKYACTIV-BODY」は,ボデー構造の原理原則に立ち返り,構造,工法,材料を一から見直した理想のボデーを目指して開発している。前後のバンパビームに,世界最高の強度を持つ1,800MPa級の自動車用高張力鋼板を採用するなど,ボデーの61%に高張安全技術の目的は,その技術の価値を直接的・間接的に受け取る方々に,安心を生み出すことだと考えている。心理的安心を達成するためには,技術的安全の提供を土台に,コミュニケーションを通して,利用者や関与者に「理解できる・頼りになる・役立つ」と実感していただくこと,更には持続的に取り組むことが欠かせない(5)。お客様,更には社会に安心を生み出すために,今後ともたゆまぬ安全への取り組みを進めなければならない。また,今後普及が進む事故予防の先進安全技術が,お客様の過信を生むことがあれば,安全技術が持っている価値を発揮させることができない(6)。安全技術は,お客様・使用者の安全感度,安全行動能力を高め,研ぎ澄ませるために使われることが理想だと考えている。ドライバを深く理解し,ドライバの安心を高め,社会の安心を高めるためにこれからも真剣な取り組みを継続していく。―149―