ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)れる。エアバッグからダミーへの入力を正しく再現するためには,内部の圧力状態を精度よく解析する必要がある。そのためには,基布やインフレータの特性が必要となる。基布の異方性を含めた伸び特性やガスの漏れ量,インフレータ特性などの基礎データを実験から求め,CAEモデルに反映している。更に,側面衝突のようにダミーとドアトリムの狭い空間でエアバッグが展開する場合においては,展開過程でのダミーへの荷重伝達を正確に予測する必要がある。これに対しては,インフレータからのガスの流動を考慮し,エアバッグの展開順序やダミー各部への入力分布を正確に予測する粒子法によるエアバッグの解析手法を開発した(Fig.9)。粒子法はエアバッグ内部に充填するガスの分子を数10万~数100万の粒子で表現し,基布表面に衝突する粒子の運動量の変化から,エアバッグ内の圧力を計算するものである。詳細なメッシュで作成したエアバッグの基布モデルを,実物の手順に併せて折り畳み,これに粒子法を適用することで,エアバッグの展開挙動やダミー各部への入力を正確に再現できる。この技術は,後述のSKYACTIV-ボデー開発に適用した。マルチロードパス構造の実現にあたっては,車体を構成するコンポーネントが,各々所定の耐力を発揮しつつ,適切なタイミングおよび順序で圧潰し,車両全体として目標のエネルギ吸収を達成することが必要である。そのため,前述のCAE技術を用いて,コンポーネントごとに変形形態や潰れ量に応じた荷重特性の目標を設定し,それを最軽量で実現する構造を決定した。そして,それらを車両として組み合わせた状態で目標どおりの順序で変形し,エネルギ吸収できるよう,コンポーネント間の接合強度や変形の伝達を最適化した。Fig.11にその結果を示す。フロントフレームのみならず,エプロンやサブフレームにも効果的に荷重伝達している様子が分かる。以上の取り組みにより,SKYACTIV-ボデーでは従来車に対して衝突性能を向上させつつ,車体全体で従来車比8%の軽量化を実現した(Fig.12)。Fig.10 Multi-Load Path ConceptFig.9 Simulation of airbag deployment( :SAB-ANIME)5.SKYACTIV-ボデー開発へのCAE適用事例5.1車体開発へのCAE適用事例以上のCAE技術を,CX-5をはじめとする新世代商品群の車体コンセプトであるSKYACTIV-ボデー開発に適用した事例を,前面衝突を例にして紹介する。SKYACTIV-ボデーでは,衝突性能と軽量化を両立するために,マルチロードパスコンセプトを採用している(Fig.10)。すなわち,従来の構造では,衝突による入力はエンジンルーム内のフロントフレームを中心に吸収していたのに対し,SKYACTIV-ボデーではエプロンやサブフレームといったフロントフレーム以外の周辺部材にも荷重を分散させることで,エネルギ吸収率を上げつつ,フロントフレームやそれを支えるフレーム後部の負担を軽減することで,車体全体を軽量化するものである。Fig.11 Multi-Load Path and Cross Section of the FrameFig.12 Body Mass and Crash Performance Comparison―154―