ブックタイトルマツダ技報　2012 No.30

概要

マツダ技報　2012 No.30

マツダ技報No.30(2012)5.2 AT誤発進抑制制御(1)物標検知SCBSと同じレーザセンサを用いており,検知角はSCBSと同等であるが,不要検知を抑えるために検知距離を車両前方4mに絞っている。また,検知対象もSCBSと異なり,車両以外の物標(壁,窓,植込み等)も障害物として認識するよう設計した。(2)障害物判定性能AT誤発進抑制制御では衝突の可能性のある障害物を精度よく検知するためのロジックを備えており,不要作動や過警報を抑制,実用品質を確保した。a.静止物判定レーザセンサが出力する物標との相対速度と自車速情報から障害物が静止物か否かの判定を行い,静止物でないと判定された場合は制御対象から除外する仕様とした。b.進行路推定舵角センサから得られる舵角情報から自車両の進行路を推定し,進行路にない物標情報は制御対象から除外する仕様とした。(3)エンジントルク抑制性能障害物との距離,アクセルペダルの踏込量(アクセル開度),及び,自車速から目標加速度を演算し,これに応じてエンジントルクを抑制する。制御目標は,例えば,踏切での閉じ込めや雪道などでの緊急脱出を考慮し,最低限のトルクを残す仕様とした。本トルク抑制制御により,駐車場等に設置されている一般的な輪止めに前輪タイヤが接している場合は,それを乗り越えない程度までトルクが抑制され,車両の飛び出しを防止する。輪止めと前輪が離れている場合,あるいは輪止め等がない場合においても,車両の加速度,及び車速が制限され,衝突時の車速を50%以下(衝突エネルギは25%以下)に抑えることが可能である(Fig.12)。6.おわりにSCBS,及び,AT誤発進抑制制御は,市場において多く発生している事故形態に注目し,機能を絞り込むことでコストを抑え,より多くのお客様に提供できるシステムを目指して開発した。このシステムの普及により現在,市場で発生している多くの衝突事故被害の低減に貢献できると確信している。今後はこのシステムの機能・性能を更に進化させ,より多くのシーンにおいて被害軽減できるシステムを目指し開発していきたい。参考文献(1) (財)交通事故総合分析センター:交通事故統計表データ,平成20年版(2008)(2)国土交通省:事故の全体俯瞰のグラフ等(平成17年),俯-93(2005)(3) (財)交通事故総合分析センター:イタルダ・インフォメーション,No.86,pp.3-6(2010)■著者■細田浩司後藤多加志高橋恭宣Collision Speed [km/h]25201510w/o AT False Departure Restraint Systemw/ AT False Departure Restraint Systsm久米孝則安松洋仁三戸手亮太501 2 3 4Distance to Object [m]Fig.12 Collision Speed with or without False DepartureRestraint System―160―