ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)としても4WD走破性能に影響がない。よって,後輪駆動力が必要な時をエンジン駆動力が前輪グリップ容量を超える直前とし,必要十分な後輪駆動力を,前輪グリップ容量を超えさせない最小限の後輪駆動力配分とする。すなわち,駆動力マネジメントコンセプトは「必要な時に必要十分な駆動力を後輪に伝える」である。これにより,後輪駆動力を必要最小化し,その頻度も極限まで低くできるため,ユニットの小型・軽量化に貢献でき,更に小型化によって,ユニットのエネルギロス低減,高効率化にも貢献できる。Fig.1 Longitudinal Acceleration Frequency(Dry Asphalt Road)Fig.2 4WD Scene in Actual Traffic2.2 4WD制御の狙い駆動力マネジメントコンセプトを換言すれば,前輪がスリップする直前に後輪に駆動力を配分して前輪スリップを未然に防ぐということである。従来システムでは,前輪スリップを後輪速度と前輪速度の差と定義していたが,本システムでは,前後それぞれのタイヤ自体のスリップ比として求める。前輪スリップ比は車体速度に対する前輪タイヤのスリップ比とし,後輪タイヤのスリップ比も同様に扱う。タイヤはスリップ比に応じた摩擦力を発生させ,スリップ比と車速,摩擦力等によってタイヤのエネルギロスが求められる。前後輪タイヤのエネルギロス(スリップロス)の他に,PTO(Power Take Off)とリヤデフユニットそれぞれのエネルギロス(機械効率ロスとスピンロス)があり,これらの総和を4WDシステムのエネルギロス総和と定義する。そして,この総和を最小化することが4WD制御の狙いである(Fig.3のBがそのポイント)。Fig.3のA点は,後輪駆動力配分過小により前輪スリップロス増加し,エネルギロス総和が増大しており,逆に,Fig.3のC点は,後輪駆動力配分過大によりユニット機械効率ロスが増加して,エネルギロス総和が増大している。このエネルギロス総和の最小点は,路面μやエンジン駆動トルク等の変化により時々刻々変化し続ける。時々刻々変化するエネルギロス総和の最小点をトレースするために,その肝といえるリアルタイムのスリップ比推定と路面に応じたタイヤモデルの推定に取り組んだ。その過程で,雪路走行中のタイヤのスリップ比-摩擦力の特性とドライバのスリップを感じる特性を計測すると,タイヤが駆動力を伝えてスリップ比が発生する現象において,ドライバが気付くスリップ比はある程度大きいことが判明した。そこで,スリップ比検知しながらスリップ比コントロールのため4WD制御の介入できる余地「不感帯」があることを見出し(Fig.4),ドライバに不安感を与えることなく,エネルギロスを最小化し,タイヤの駆動力を最大に活用できるスリップ比に制御できる技術を構築した。ここで,このエネルギロス総和を最小化すると,4WD走破性能を向上させ,自ずと燃費など環境性能は最大化されていることになる。従来までは,4WD走破性能を向上させるとユニットのエネルギロスが増加するため,燃費など環境性能と相反すると考えていたが,タイヤまで含めた4WDシステムエネルギロス総和の常時最小化を狙うことで,4WD走破性能と燃費など環境性能の双方を高めるというブレークスルーを実現した。―176―