ブックタイトルマツダ技報　2012 No.30

概要

マツダ技報　2012 No.30

No.30(2012)マツダ技報論文・解説37バンパ用高剛性ポリプロピレン材料の開発Development of High Stiffness PP for Bumper Fascias朝野千明*1藤和久*2原正雄*3Chiaki AsanoKazuhisa ToMasao Hara大西正明*4Masaaki Onishi要約低比重という樹脂材料の特徴を活かした軽量化が期待される中,バンパ用材料の剛性を飛躍的に向上させることにより,薄肉化を実現する新規材料を開発した。材料の高剛性化による薄肉化において,材料として最大の課題は,材料の剛性と耐衝撃性など相反する特性の両立である。従来,基材であるポリプロピレン(以下PP)と耐衝撃性を向上させるゴム,そして充填材であるタルクの3成分系であった材料のうち,PPとゴムを機能別に2種類ずつ配合することで5成分系とした。この成分と組成比の制御により表層に低分子量ゴムを,断面中央に,耐衝撃性を担う高分子量ゴムを偏在させた。これにより各種特性を両立し薄肉軽量バンパを実現して,2012年2月に発売したCX-5に採用した。本開発により,20%の軽量化と成形サイクルタイムの半減を実現している。SummaryWe have developed resin material for bumper fascias that maintains the equivalent stiffness toparts made with conventional materials while achieving significant weight reduction. Using thismaterial, the parts manufactured are thinner than those using conventional resin, resulting ina significant reduction in the resin required to manufacture parts. When the material is used forbumper fascias, it contributes to weight reduction of approximately 20%. In the bumper fasciaproduction process, this reduced thickness allows for shorter cooling time for molding, and byusing computer-aided engineering (CAE) technology, the fluidity of the resin material has alsobeen optimized. As a result, bumper fascia molding time, previously 60 seconds, has beenhalved to 30 seconds, leading to cost reductions of bumpers molding process.1.はじめに2.開発の狙い自動車の燃費性能競争が激化する昨今,エンジン性能だけでなく,空力性能の向上や軽量化を,これまで以上に追求する必要が高まっている。マツダは大型の外装部品として剛性や成形性などの要求レベルが高いバンパ用に,従来より高剛性,高流動のPP材料を開発した。バンパなどの射出成形部品は,薄肉や大型の成形品になるほど成形が難しく,バンパで通用する軽量化や材料に関する技術は,自動車部品の多くに適用が可能である。バンパとしての開発目標は,従来の部品コストと同等以下で,20%の軽量化を達成することとした。20%軽量化のためには,現状の平均板厚2.5mmを20%削減して2.0mmにする必要がある。薄肉化によって低下した剛性を補うため,Table 1のとおり材料としての開発目標は,曲げ弾性率を従来材に対して50%向上の2300MPaとした。剛性は板厚の3乗に比例することから50%の曲げ弾性率向上では不足するが,不足分については,構造と板厚配分の最適化によって達成したいと考えた。また,薄肉化によって成形性が悪化することを防ぐため,成形時の樹脂の流*1~4技術研究所Technical Research Center―191―