ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)れやすさの指標であるメルトフローレート(以下MFR)は25%上げ,40g/10minとすることを目標とした。Table 1 Properties of Conventional PP and Target ValueConventionalTarget ValueStiffness Flexural Modulus 1570 MPa 2300 MPa≦Moldability Melt Flow Rate 33 g/10min 40 g/10min≦Impact ResistanceProperties3.1開発コンセプトHigh Speed TensileStrength(-30℃)3.材料の開発Value57 MPa 57 MPa≦材料開発において,最も重視したのが「高次元での物性バランス」である。ここでは,材料の剛性,成形性,耐衝撃性について説明する。従来のバンパ材は,ベースとなるPPにゴム,そして充填材としてタルクを配合した,いわゆる3元系の材料である。Fig.1に示すように剛性を向上させるにはタルクの配合量を増やし,PPの分子量を上げればよい。しかし,それでは成形性や耐衝撃性が低下してしまう。Flowability &Impact ResistanceLower←Molecular weight of PP→HigherLower←Talc content→HigherTargetAddition of Low MolecularWeight PPConventional●Addition of High MolecularWeight ElastomerStiffnessFig.1 Relation between Flowability, Impact Resistanceand Stiffnessこれに対して開発材は,高分子量のPPと,低分子量の2種類のPPにそれぞれ役割を分担させた。高分子量PPで剛性を向上し,低下した成形性を低分子量PPの添加で補って,剛性と成形性を両立した。また,開発材は剛性向上のために増加したタルクの影響により,耐衝撃性が低下した。これを補うために従来中程度であったゴムの分子量を上げて耐衝撃性を向上した。しかし,高分子量ゴムの使用にも問題があった。これまでの量産材の検討などから成形品表面に出るゴムの面積が外表面に存在する比率(以下表層ゴム分率)を一定値以上確保することで,塗装の密着性が確保できることがわかっている。ところが高分子量のゴムは球状になろうとする性質が強く,表層ゴム分率が確保できない。そこで表層にゴムが出るように,分子量が低いゴムを別に添加した。つまり従来,中程度の分子量を持つゴムを使用していたものを,高分子量のゴムで耐衝撃性を向上させ,低下する塗装密着性を,低分子量のゴムで補うことで,耐衝撃性と塗装性を両立した。射出成形用材料は特性が異なるものを混ぜた場合に,層分離を起こし,層間剥離することがあり,安易な多成分化は危険である。開発材料にあっても各組成の分子量と配合量を調整しながらテストピースでの確認はもちろん,実際のバンパを成形して性能確認を繰り返し,最適化を行った。また,日本国内で生産されるPP,インラインコンパウンドといわれ,樹脂の重合プラントでペレットといわれる状態に造粒される。この方法は,別に造粒工程を持たないためコスト的に有利である。一方重合プラントは巨大で,基材となるPP以外の成分を多種,大量に添加するとプラント自体の生産性が低下し,経済的に成立しない。本開発では材料メーカとの密接な共同開発を通じての材料の限界設計に近づけることで5成分系を経済的に生産可能な組成バランスを探し出した。3.2開発材の微細構造Fig.2に従来材のミクロ断面構造を模式的に示した。従来材はPP,タルク,ゴムの3成分で構成される。Fig.3は開発材の断面構造の模式図で,PPもゴムも各2成分からなる5成分系である。2.0mm2.5mmCurrent MaterialtalcPPelastomerFig.2 Section Microstructure(STD PP Composite)Developed MaterialLow molecularLow molecularweight elastomerweight PPskin layerHigh Molecularweight PPHigh molecularweight rubbercore layerFig.3 Section Microstructure(Developed PP Composite)―192―