ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)パワーウインドウのシステム開発にモデルベース開発(MBD)を適用した。3.モデル構成モデル化の対象となるシステム構成をFig.1に示す。このシステムを納入部品単位で分割し,設計諸元とモデルパラメータの一致を厳守することで,納入部品単位の入出力特性を対象に,モデルと製品の開発プロセスと管理の整合性を堅持した。しかし,同一の設計諸元を用いても,納入部品単位で分割したモデルごとの粗密によって解析精度に差異が発生すると適正な機能配分が困難である。分野の壁を越えて適正に機能配分を行いたい領域を明らかにし,演繹的推論と帰納的推論の双方から無理矛盾なく必要とする解析精度を導出可能な,詳細化レベルと範囲を明示することが重要であり,相応の試行錯誤が必須である。この試行錯誤を,モデル作成過程で実施することは膨大な時間を要し,非効率であり現実性に欠ける。そこで,モデル作成前に,特性,状態,エネルギ流れを視覚的に表現するブロック線図(1)を用いて,納入部品単位で分割したモデル間の入出力の整合取りを含めて論理展開の妥当性検証を完了し,モデルの設計図とした。このモデルの設計図に沿って詳細設計へと展開することで,分野の壁を越えて関連性能を適正に機能配分可能とするモデルを開発した。三次元形状に依存する領域は大規模シミュレーションを用いた機構解析モデルにて再現し,ウインドウガラスの加速度をコントロールモデルが受け取る構成とした(Fig.2)。これにより,ウインドウガラス昇降時の挙動を詳細に再現する機構と制御の練成解析モデルの開発期間を,過去の経験をもとに,三次元形状に依存する領域までを数学モデルで構成した場合,80時間程度必要であったが,本開発方法では12時間に短縮できた。解析時間を短縮する手段として,大規模シミュレーションの離散化が挙げられるが,演算ステップごとの運動エネルギの急激な変化を伴い,モデルが不安定となり演算が発散する課題がある。この対応策として,演算ステップを細かくして運動エネルギの急激な変化を緩和しモデルの安定化を図った。更に,数学モデル側で,大規模シミュレーションが受け取る駆動力と大規模シミュレーションから出力される加速度を正規化し,モデル全体を安定させることで,実機では10秒の現象の演算時間が18,000秒から100秒に短縮できた。operationbatterypow er flowpower flowinputfeed backcontroller motor damper gear cablecontrollerbatterymotordamperbetlaine inbetlaine outglass runwindow glasssensorwwindowindow g glass lass(carrier plate)3D modelFig.2 Model Building Imagespeedpowercarrier platesensorgearcableregulatorFig.1 Power Window System Organization4.モデル開発期間と演算時間の短縮実機が存在しない開発の初期段階から性能検証を行い,目標性能を満足する仕様を短期開発の中で決定するには,モデル開発の早期化に加えて,予測精度は維持した上で短時間に解析が完了できるモデルとする技術が必要となる。しかし,三次元曲面を持つウインドウガラスが弾性特性を有したガイドレール内を昇降する際の接触力分布を求め抵抗として扱おうとした場合,数学モデルだけで全ての現象を再現することは困難である。また,経験的な統計モデルだけで再現することも信憑性に欠ける。このたびの開発では,ウインドウガラスがモータから駆動力を受け取るキャリアプレートまでのパワーフローを数学モデルで再現し,Fig.3 Experimental Environment5.妥当性検証このモデルの解析精度を確認するため,既存の量産車両を用いて予実検証を行った。実機計測状況をFig.3に示す。Fig.4は,ステップ入力に対する過渡応答の検証結果を示す。ウインドウガラス上昇途中に,頭部(剛体)などの挟み込みを想定した評価モードである。モータの最大出力―202―