ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)いずれも,剛体の有無,弾性体の有無,電圧変動の有無だけが異なるだけの,全く同一のモデルパラメータを用いたモデルの演算結果である。評価条件を変えても解析精度が維持されたので,分野の壁を越えて適正に機能配分可能なモデルとして実証が得られた。予実検証の過程でモデルの不備が認められた場合,整然としたモデル開発が困難となるため,最も効率的な検証手順としたいものである。今回の事例では,まずステップ入力による過渡応答にて,高負荷領域のシステム全体としての無駄時間と時定数と最大出力の整合取りを完了させ,次にランプ入力による過渡応答にて,中負荷領域のシステム内の伝達ロスの整合取りを完了させる。更に矩形波入力による過渡応答にて,軽負荷領域のシステム内の無駄時間と時定数の配分確認を完了させる。最後に複合条件入力による過渡応答にて,軽負荷から高負荷までの整合取りの完了を確認する予実検証手順が最も効率的である。6.成果ユーザ意図(スイッチ操作)に沿って確実に昇降する商品性と,頭部や手などの挟み込みを確実に検知し上昇を反転する安全性を両立する制御定数を決定するだけでも,供給電圧変動,製作誤差,昇降繰り返しによる劣化などのクロスチェックが必要であり2,000を超える評価パターンを実行する必要がある。更に,必要な性能は維持した上で,コストと重量を適正に機能配分する必要がある。モータなど対象となる部品の数を3部品と仮定しても,クロスチェックの繰り返しは3回となり,シミュレーションの実行回数は6,000を超える。1回のシミュレーション時間を18,000秒つまり5時間とした場合,30,000時間が必要となり机上検証段階で全ての評価を完了することは困難である。このモデルを用いることで,確実にウインドウガラスが昇降する商品性と,挟み込みを検知しウインドウガラスの上昇を停止し反転する安全性を,実機が存在しない開発の初期段階から検証し,目標性能を満足する仕様を短期開発の中で決定することができた(Fig.8)。これにより,製品製作前に性能検証を完了させる開発スタイルを具体化することができた(Fig.9)。Theoretical phaseConventionala.Experience-based drawingev aluationNewa.Model design based on blockdiagramb.Drawing spec. deploy ed in themodelc.Theoretical perf ormanceev aluationd.Optimization of drawing spec. anddetermination of control constantActual vehicle phasea.Actual-v ehicle ev aluation anddata measurement with controlconstant of preceding v ehicleincorporatedb.Analy sis of measured v alueand correction of control constantc.Reev aluation on actual v ehiclea.Perf ormance v erif icationFig.9 Innovation of Window Glass System DevelopmentProcess7.まとめ本稿で紹介したモデルは,動力源からの駆動力をギヤ,ワイヤなどを経由して対象物を駆動させる機構や,挟み込みを検知して反転する制御など,基本的な構成が酷似していることもあり,三次元形状と部品特性と制御の入れ替えにより,短時間で電動スライドドアのシステム開発へ展開することもできた。更に劣化後の部品特性と入れ替えることで劣化後の挙動も再現でき信頼性領域の机上評価も行った。このように高い汎用性と拡張性を有している。自動車には同様の基本構成を持つシステムが多く存在するため,この技術を広く展開することで,将来的には車両総合システムとして稼働させて,よりよい製品を,より早くより求めやすい価格で提供していくことに貢献したいと考えている。参考文献(1)長松晶男ほか:製品開発のための新しいモデル化手法(機能モデルの基本概念),日本機械学会論文集C編,64巻,622号,pp.131-138(1998)beforeafter30,000≒99.4 %167 shortening of operation time■著者■time[hour]Fig.8 Comparison at Operation Time徳光文広田中松広―204―