ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

No.30(2012)マツダ技報6.3後処理システムのコンパクト・低コスト化(1) DPF容量・貴金属量選定近年ディーゼル車の後処理システムは,排出ガス規制強化に伴い大型・高コスト化しつつある。この後処理システムをコンパクトに仕上げかつ低コスト化を図ることが重要課題の一つに揚がっている。SKYACTIV-Dでは,理想に近づく燃焼の実現によりNOx触媒を不要にするだけでなく,世界最小レベルのDPF容量とし,また貴金属の担持量についても前モデル比約70%削減した。とくにDPF容量低減にあたっては,容量を低減すると堆積できる煤の許容量が減少し再生頻度が増えることから,エンジンオイルへの燃料希釈量が過多になり場合によっては品質の不良につながってしまう。SKYACTIV-Dでは,前モデルに対して煤を高密度で収集し再生頻度を抑制する,また燃料希釈しにくい理想の再生燃焼を実現することで課題解決を図った。PilotTime→PilotMainMainPost1SKYACTIV-DPost1Post3 Post5Post2 Post4Post2 Post3インジェクタからシリンダライナへの到達距離よりポスト噴射時の噴霧ペネトレーションが短ければシリンダライナへの燃料付着量が抑制される。噴霧のペネトレーションは1噴射当りの噴射量および噴射圧で決まることからポスト噴射を多段化し1噴射当たりのポスト噴射量を少なくすることで燃料希釈は抑制可能である。SKYACTIV-Dでは,前モデル比ポスト噴射の更なる多段化を図りポスト噴射の段数を最大5段噴射(Fig.11)とし前モデルに比べ燃料希釈を約3割低減した(Fig.12)。7.まとめSKYACTIV-Dは,理想の内燃機関へ近づけるために,世界一の低圧縮比をキーイネーブラとして従来の相反する技術課題をブレークスルーしていくことで,コスト低減しながら以下を実現した。・ワイドレンジ高トルク化&機械抵抗を26%低減・TDC燃焼による燃焼効率改善・NOx後処理なしで国内ポスト新長期規制&Euro6適合・20%の軽量化SKYACTIV-Dは走り,燃費,EMを高次元でバランスさせたユニットとして自信を持ってお客様に提供するものである。Time→Previous model参考文献Fig.11 Multi-Pilot Injection Pattern of DPF RegenerationFuel dilution rate(wt%)1086420Previous modelΔ33%SKYACTIV-DFig.12 Fuel Dilution Rate Comparison(2) DPF再生時燃料噴射制御改良DPFへ堆積した煤は,排気ガス温度を600℃程度に昇温させ煤を再燃焼させる。この排気ガス温度昇温のために,ポスト噴射を実施するがポスト噴射は噴射時期がATDC30deg以降とピストンキャビティ外へ噴射するため,燃料の一部がシリンダライナ壁面へ付着しエンジンオイルへの燃料希釈が発生する。燃料希釈対策としてポスト噴射をピストンキャビティ内へ噴射する技術があるが,この場合ポスト噴射が主燃焼と干渉し排気ガス温度の異常上昇およびエンジントルクばらつき等が発生し実現は難しい。また,排気管へ専用の噴射インジェクタを追加するなどの技術があるがこのシステムは搭載性・コスト・排気インジェクタの耐久性等システムとして効率性に欠ける。そこでSKYACTIV-Dでは,壁面付着しないポスト噴射にて再生制御を行うことを理想に掲げ検討を行った。ポスト噴射の改良ポイントは噴霧のペネトレーションである。燃料噴射(1)旗生篤宏ほか:乗用車用新世代クリーンディーゼルエンジンの開発,2012年自技会春季大会,20125188(2012)(2)金尚奎ほか:ディーゼル機関における燃焼室形状の改良による排気低減-EGG燃焼室コンセプトの検証-,第21回内燃機関シンポジウム,P.135-140(3) Sakono., et al. : Mazda SKYACTIV-D 2.2L DieselEngine, AACHEN COLLOQUIUM 2011, p.943(2011)(4)中井英二ほか:2002年自技会春季大会,20025154(2002)(5)中井英二ほか:乗用車直噴ディーゼルエンジンNewMZR-CDの紹介,マツダ技報,No.23,pp.98-103(2005)(6)上杉康範ほか:新型MZR-CD 2.2エンジンの紹介,マツダ技報,No.27,pp.15-20(2009)■著者■森永真一詫間修治西村博幸―13―