ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

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概要

マツダ技報 2012 No.30

マツダ技報No.30(2012)そこで本研究では,構造用接着剤の化学変化と接着強度の関係に着目し,吸水による経時劣化現象の定量化に取り組んだ。その結果,吸水による接着強度の経時劣化と加水分解度合いに相関があること,および加水分解度合いを指標として用いることで市場での経時劣化を推定できることを確認した(3)。2.接着剤の経時劣化まず,接着剤の吸水による経時劣化現象を解明するため,吸水の過程と,これに伴う接着強度低下および化学的な変化を調べた。2.1吸水過程水分(H2O)は接着剤と同じ軽元素で構成され,かつ透明であるため,接着層内での水分拡散を検出することは困難である。そこで,蛍光トレーサとして一般的に用いられるローダミンBによる水分拡散の可視化を試みた。Fig.2に吸水処理方法を示す。接着継手試験片は,1.0mmの鋼板を接着厚さ0.1 mmで接着した後,幅3 mmの短冊状に切断して作製した。作製した試験片は,80℃に加温したローダミンB 2 mass%水溶液に所定日数浸漬した。その後,試験片を切断し,光学顕微鏡にて断面観察した。Test couponTracer in water(80℃)Fig.2 Test MethodFig.3に吸水後の接着継手断面の光学顕微鏡像を示す。水分とともにローダミンBが接着層内部に拡散し(赤色の領域),水分拡散の進展状況が可視化できている。吸水日数が経過するに従い,水分は接着端面から層内に均一拡散していることがわかる。(a) fresh(b) 1day2.2接着強度吸水による接着剤の強度劣化を把握するため,吸水処理時間による接着強度の変化を評価した。Fig.4に試験片形状を示す。被着体には,厚さ1.0 mmの非めっき冷延鋼板(SPCC)を用いた。接着剤は,Table 1に示すように機械的特性の異なる一液熱硬化型のエポキシ系構造用接着剤A,Bの2種類を使用した。接着厚みはガラスビーズで0.25mmに調整し,所定の温度と時間で接着剤を加熱硬化した。吸水による経時劣化は,Table 2に示す条件で高温高湿環境下,または水中に浸すことで行った。(a)(b)251Fig.4 Geometry of Test Coupon (a) lap Shear Joint, (b) T-Peel Joint (unit: mm)Table 1 Mechanical Characteristic of AdhesivesYoung's modulus Strength ElongationAdhesive A 1500 MPa 35 MPa ~10 %Adhesive B 2200 MPa 40 MPa ~1 %Table 2 Condition of Water AbsorptionConditionTimeHumidity10015012.5Adhesive Layer(0.25t)50,60 ,70,80℃95 %RH(RH:Relative humidity)Adhesive Layer(0.25t)R225(50)1,5,20 daysImmersion 50,60,70,80℃(c) 5 days(d) 20 daysFig.3Image of Test Coupons After Water Absorption at80℃構造用接着剤Aの80℃での吸水処理時間による接着強度の変化をFig.5に示す。比較として,図中には熱処理のみの場合のデータも示している。熱処理のみの場合は,引張せん断,T型はく離ともに強度の低下はほとんど起こらない。これに対し,吸水処理を行った場合は高温高湿中でも温水中でも同様に,引張せん断,T型はく離ともに吸水―220―