ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
No.30(2012)マツダ技報Fig.1 Building Block Strategy2. SKYACTIV-Dの開発目標SKYACTIV-Dでは環境性能の追求だけではなく燃費/エミッション/出力/騒音・振動の各性能を高次元でバランスさせ,マツダらしい力強い走りを実現させることを目標とした。以下,具体的な各性能目標について述べる。2.1エミッション大幅に強化される欧州のEuro6/国内のポスト新長期規制に適合させることはもちろん,燃費改善が進むガソリン車や低価格化が進むハイブリット車に対しても優位な商品競合力を持たせるため排出ガス規制対応のためのコストを低減することが必要不可欠である。クリーンな燃焼によりエンジンより排出されるエミッションを低減し,コストアップにつながる尿素SCRシステムやリーンNOxトラップ触媒といったNOx後処理システムなしでグローバルな排出ガス規制に適合することを目標とした。2.2燃費一般的にガソリンエンジンに比べ燃費性能が良いとされているディーゼルエンジンであるが,近年の厳しい排出ガス規制に対応するため,高圧縮ディーゼルエンジン本来の高い熱効率が実現できていない。SKYACTIV-Dでは従来の16.0~18.0という圧縮比に対し14.0という低圧縮比を採用し高膨張比燃焼と機械抵抗低減を実現し,更にアイドリングストップシステムも導入し従来比約20%の燃費向上を図ることを目標とした。2.3走行性能燃費やエミッションといった環境性能を高めるだけではなく,マツダのZoom-Zoomな走り感を実現するため,ディーゼルエンジン特有の力強さの更なる向上(MAXトルク420Nm/2,000rpm)と,スムーズに高回転(5,200rpm)まで伸びのある特性の実現を目標とした(Fig.2)。加えて,ドライバの「意のままに」,アクセル操作に対して期待どおりの車両挙動(加速G)で狙いの車速に到達する走りを目指した。Fig.2 SKYACTIV-D Torque Improvement3. SKYACTIV-Dの制御システム3.1技術コンセプト従来の高圧縮比ディーゼルエンジンでは,上死点における圧縮温度や圧力が非常に高くなるため,筒内に噴射された燃料は空気と十分に混合する前に着火し局所的で不均一な燃焼が起こり,高温化によるNOx生成や酸素不足によるススの発生を招いてしまう。そのため,ピストンが上死点を超え筒内圧力と温度が低下してから低膨張比で燃焼させる必要があり燃費が悪化していた。SKYACTIV-Dでは圧縮比を大幅に下げ上死点における筒内圧力と温度を低下させ,燃料と空気を混合する時間を稼ぎ均質燃焼させることを可能にした(Fig.3)。Fig.3 Higher Expansion Ratio Due to Lower CompressionRatioその結果,NOx・ススの発生を抑制しつつ,上死点付近から高膨張比で燃焼できるようになり燃費が向上した。更にEGR率を高め燃焼温度を下げることでもNOxの低減を図り,NOx後処理システムなしで排出ガス規制に適合している。また,2ステージターボチャージャを採用し,少流量で効率よく過給できる高圧段小型ターボチャージャ(以下小ターボ)と大流量での高過給が可能な低圧段大型ターボチャージャ(以下大ターボ)を,それぞれ最適な運転領域で作動させることにより,低回転での高トルクと高回転における高出力を両立し,従来のディーゼルエンジンと比較しワイドレンジな運転領域,かつ全域での高いレスポンス性能を―15―