ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)実現している。また,高いEGR率を満たしつつもススの発生を抑制し,加速時に要求される燃料を燃焼させるために必要となる余剰空気量を確保している。ドライバの「意のまま」の走りを実現するため,ドライバのアクセル操作に対して期待される目標加速度を推定し,そのときの車両状態を考慮し目標エンジントルク,目標燃料噴射量を決定する駆動力制御を採用した。また,停車時の燃料消費量を最小限に抑えるため,ディーゼルエンジン乗用車としては国内初のアイドリングストップシステム(i-stop)を搭載した。3.2全体システムFig.4にSKYACTIV-Dの全体システムを示す。Intake shutter valveCharge air coolerEGR valve(With EGR COOLER)EGR coolerInjection nozzleGlow plugIDEVAR/VEGR valve(Without EGR COOLER)CBVW/GFig.4 Fuel and Engine Control SystemAir mass flow sensorAir cleaner2State Turbo chargerOxidation catalystCatalyzed DPF(1)燃料噴射システム最大噴射圧197MPaのマルチホールピエゾインジェクタを採用することにより,従来のソレノイドインジェクタに対し噴霧粒径・噴射量・タイミング・段数・噴射インターバルの制御性を改善し,緻密な混合気形成を可能としている。(2)吸気システムエアフロセンサにより吸入空気量を検出した後,2ステージターボチャージャの大ターボ・小ターボにより過給されインタークーラを介してインテークマニホールドに流入させる。(3)排気システム排気ガスをインテークマニホールドに再循環し燃焼温度を下げることによりNOx発生を低減させるEGR経路と,ターボチャージャ(タービン)を駆動し,酸化触媒・DPFにてススを処理した後,外部に排出する経路からなる。EGR経路では,2つのバルブを使用しホットEGRとEGRクーラを通過したクールドEGRの割合を適切にコントロールしている。また,インテークマニホールド上流のインテークシャッタバルブにより吸入空気量・EGR量を制御している。(4) IDEVA (Intake stroke EGR using Double ExhaustValve Actuation system)排気バルブ二度開きによる吸気行程EGRシステムを採用し,吸入行程中に排気バルブを開くことにより高温の燃焼ガスをシリンダ内に逆流させ圧縮時の温度上昇を促進し着火を安定させている。(5)グロー耐久性に優れたセラミックグローと通電電流を調整するグローコントローラを採用し,始動時に急速昇温を行うことで,極冷間での始動時間を大幅に短縮させている。3.3車両制御との協調PCM (Powertrain Control Module)は,TCM (TransmissionControl Module)やDSC (Dynamic StabilityControl)などの車両系制御モジュールと,CAN信号によりエンジン・車両状態について相互に通信を行い,車両全体として整合の取れた制御を実現している。以下,CX-5で採用した走行性能・安全性能・燃費性能の向上のための各種制御について説明する。(1) AT協調制御PCMはエンジン回転数や目標トルクなどの各種運転状態に加え,高精度に推定したエンジン発生トルクをTCMへ送信し,変速時にはTCMの要求トルクを忠実に再現することにより新世代高効率AT「SKYACTIV-DRIVE」でのなめらかな変速に貢献している。(2) DSC滑りやすい路面や危険回避の急ハンドル操作時などにも安定した走行姿勢を維持するためにDSCから要求されるホイルトルクに対し,PCMはTCMから受信したギヤ比やトランスミッション伝達効率のほか,オルタネータやエアコンコンプレッサでのロストルクを推定し,目標エンジントルクを決定したのちエンジン制御をしている。(3) i-stopエンジンがアイドリングしている間の燃焼消費をなくし燃費を向上するシステムである。PCMはハンドル舵角信号やドア・シートベルト等の情報をもとに,運転者の安全性を確保しエンジン休止,エンジン再始動を行う。また車両の電源を確保するためにバッテリの状態を監視し確実なエンジン再始動を実現している。以下,SKYACTIV-D制御として,新規に開発した燃料噴射制御と吸気排気コントロールについて説明する。3.4燃料噴射制御(1)予混合燃焼の着火時期制御SKYACTIV-Dでは低圧縮比と多量EGRにより,燃料と空気を十分に混ぜて均一に燃焼させる予混合燃焼を実現することで,不均一燃焼によって発生するNOxとススの抑制を目指した。予混合燃焼では,従来の拡散燃焼のよう―16―