ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

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概要

マツダ技報 2012 No.30

No.30(2012)マツダ技報に燃料を噴いて直ちに着火はせず,エンジンの吸気温度,圧力およびEGR量などの影響により,燃料を噴射してから着火するまでの時間が変化する(Fig.5)。また,着火時期によってNOx,ススおよびエンジン出力(燃費・音)などの各性能に影響を及ぼす(Fig.6)。Rate of Heat Generation [J/deg]Power Deterioration [%]Soot Deterioration [%]NOx Deterioration [%]1201008060402008060402040302010Effects of EGR and so onwithoutIgnition Timing ControlwithIgnition Timing Control★Injection TimingTarget-15 -10 -5 0 5 10 15Crank Angle [deg. ATDC]8642000★★Ignition TimingFig.5 Ignition Timing of Premixed CombustionTarget-6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3Ignition Timing [deg. ATDC]Fig.6 Performance of Ignition Timingこのため,予混合燃焼については,熱炎自着火発生時期の推定方法として知られているLivengood-Wu積分式をベースにエンジンの吸気温度,圧力およびEGR量などの影響因子から着火時期を予測し,狙いの着火時期になるように噴射タイミングを最適に制御している。これにより,着火時期の影響因子に対してNOx,ススおよび燃費などのロバスト性を確保している。(2)拡散燃焼の燃料噴射制御SKYACTIV-Dでは低圧縮比と多量EGRにより,ピストンの圧縮圧力や温度が下がるため,エンジンの吸気温度,圧力およびEGR量などの影響により,失火や半失火が生じてエンジンが不安定な状況が起きる可能性が高圧縮比エンジンと比べ高くなる。このため,着火誘導期の前炎反応進行速度を表現する方法として,実験結果の回帰式を用いて,エンジンの吸気温度,圧力およびEGR量など着火に影響する因子から着火のしやすさを見積もる指標を設定し,確実に燃焼させるために必要な噴射回数,噴射量および噴射タイミングを最適に制御することで,耐失火性を確保した。3.5吸排気コントロール(1) EGR制御EGRの制御方式として排気λ制御が一般的であるが,SKYACTIV-Dではシリンダ内の酸素濃度制御を採用している。NOx排出量に高い相関がある筒内酸素濃度を制御することにより,排気λの変動や過給遅れに対してもNOx排出量をロバストに制御可能となる。また,筒内酸素濃度は予混合燃焼時の着火遅れ期間に対しても支配的であるため,着火タイミング制御にも貢献する。一方,排気λと異なり,筒内酸素濃度のセンシングは非常に困難であるため,吸排気経路内ガスの酸素濃度をモデル化することにより筒内酸素濃度制御を実現している。(2) 2ステージターボチャージャ制御Fig.7に2ステージターボチャージャのシステム図を示す。排気側にはレギュレート・バルブ(以下,R/V),ウェイストゲート・バルブ(以下,W/G)の2つのバルブを備えており,R/Vを制御することで小タービンへの排気ガス流入量を,W/Gで大タービンへの流入量を調整している。吸気側に配したコンプレッサ・バイパス・バルブ(以下,CBV)は,大コンプレッサで過給した新気を,小コンプレッサを介さずにシリンダへ吸気させる場合に開放する。これら3つのバルブを制御することにより,低回転軽負荷では小ターボを主体とした大小ターボ2段過給とし,高回転高負荷側では大ターボ単段過給へと切り替えを行っている(Fig.8)。低回転軽負荷では全バルブを閉とし,大小2ステージ過給を行う。回転/負荷の上昇と排気エネルギの上昇に応じてR/Vを徐々に開けてゆき,過給圧の急激な低下を発生させないようにCBVを開け,大ターボ単段過給へと切り替える。一方減速時,大ターボ単段過給から,大小2ステージ過給に切り替える場合には,CBVを閉じる前にR/Vをわずかに閉じて小ターボを予回転させた後にCBVを閉じることで過給圧変動を抑制している。―17―