ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30
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マツダ技報 2012 No.30
マツダ技報No.30(2012)トータルギヤレシオはCX-5の15.5,新型アテンザの14.2と現行比約10%高速化し中低速のヨーレイトゲインを増加させた。フロントサスペンションはキャスタ角を約7degと大きく取りキャスタトレールを拡大することで,セルフアライニングトルクを増やしステアリングホイールの手応え増加,外乱に動じない安定性を確保した。また,車速や操舵角,操舵速度に応じたきめ細かなアシスト特性を持たせ,様々なシーンに適応した操舵フィールを実現した。3.3 (B)中低速域の軽快感と乗心地の両立サスペンションのジオメトリとコンプライアンスを最適化することで,車両運動に必要なコーナーリングパワーに占めるタイヤ接地荷重変動成分を減らした,これによりダンパ減衰力とブッシュのばね定数を低くでき,軽快感と乗心地を両立させた。また,リヤダンパはアクスルに取り付け点を設けることで,ダンパレバー比を1.0とし減衰力の応答を向上させた。前後入力を主に受け持つトレーリングリンクはボデー取り付け点を,現行アテンザ比45mm上方に設置し上下ストロークに対する後退軌跡を大きく取った。これにより突起乗り越し時のショックや粗粒路面の細かな入力をリンク前後方向に伝えにくくして車体乗員位置の振動を低減した。3.4 (C)軽量化とダイナミクス性能,NVH性能の両立SKYACTIV-シャシーでは基本骨格の最適化により軽量化と高剛性の両立を実現した。リヤサスペンションクロスメンバのボデーマウントはラバーマウントとし,フロントペリメータフレームは従来のラバーマウントからリジッドマウントとすることで,操舵時の剛性感や応答遅れとNVHや乗心地を両立しながら全体で軽量化を計った。サスペンションの構造部材は,入力をストレートに受け止めるよう最適化した基本骨格とすることで薄板化ができ,軽量化と高剛性の両立をはかった。例えば,リヤサスペンションクロスメンバは現行から約20%の軽量化をしながら剛性は同等を達成した。ロードノイズの低減は,サスペンション部品の共振点を重なり合わないように調整することで,特定の周波数の音が大きくなることを防止した。部品ごとの共振点配置をFig4に示す。更にホイールについては,各部位の構造とロードノイズに寄与の大きい特性との関係を解明することで,デザイン性を確保しながら最も重量効率が優れる仕様を導出,大径化に関わらず重量増加を最小限に抑え,大幅な特性改善を実現した。サスペンションブッシュは,前述のように軽快感と乗心地を両立しながら,ばね定数を低減させたが,更にロードノイズに寄与の高い部位のブッシュについては,構造とラバー材料を工夫することで動的ばね定数の低減に配慮した。たとえばフロントストラットマウントは現行比24%減,リヤクロスメンバブッシュは約80%と大幅に低減した。Fig.4 Suspension Modal Map3.5ダイナミクスフィールの統一感の実現SKYACTIV-シャシーの進化として取り組んだダイナミクスフィールの統一感は,車両のヨーレイト,横Gおよびロール応答の位相遅れを適正化し,車両応答のつながりを向上,操舵力と車両応答の関係を,切り込み側のみならず戻し側も見直すことにより,リニアでドライバ操作と車両の一体感が得られることに注力した。このために,コーナーリングパワーの前後輪のバランスを微妙に調整しヨーレイト,横G応答のリニアなつながりを実現した。ロール軸は前下がりのダイヤゴナルな設定にするとともにアンチダイブ/スクウォット,アンチリフトジオメトリーの最適設定を行った。CX-5はセダン比で高い重心に合わせてロールセンターを高く設定した。スムーズなストローク感を実現するためフロントコイルスプリングの配置と横力制御量を適正化,フロントロアアーム前後ブッシュ特性のバランスにより抗力を減らしストロークに対するフリクション低減を行った,リヤサスペンションでは従来に対して十分長いリンク長を確保しブッシュのねじり角度変化を抑え二重ブッシュとしてストローク抗力を低減した。その上でCX-5,新型アテンザそれぞれのキャラクタにあわせ,前後のスプリングとスタビライザの調整により,ばね上の動き量と動きモードを造りこんだ,これらにより荷重移動に対して初期からスムーズでリニアなサスペンションストローク感,ボデーモーションを実現した。4.達成性能SKYACTIV-シャシーでは走る歓びの更なる進化「人馬一体のドライビングプレジャー」の向上,快適性や安心感改善による「走りの質」の向上を目指してきた。これらの基本性能のポテンシャル向上の造りこみに加えて,個別車種としてのキャラクタ造りに注力した。CX-5はSUVとしての穏やかな動きを持ちながら,一体感のある乗用車に近い運転感覚で競合車にない魅力を狙い,新型アテンザでは上質で気持ちのよい走りを目指して,より高速域までをカバーしながらスポーティセダンにふさわしい一体感のある応答の実現を目指した。これらの達成性能を以下に紹介する。―34―