ブックタイトルマツダ技報 2012 No.30

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マツダ技報 2012 No.30

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概要

マツダ技報 2012 No.30

No.30(2012)マツダ技報して可変電圧オルタネータ・DC-DCコンバータ・キャパシタ・バッテリから構成される(Fig.2)。Engine & VehicleAlternatorCapacitorDC-DCConvertorPower LineFig.2 System of i-ELOOP「i-ELOOP」は,エアコンやオーディオなど,走行中の車両に必要な電力をほぼ減速回生エネルギで賄うだけでなく,アイドリングストップ技術「i-stop(2)」と組み合わせて適切な充放電コントロールを行うことにより,アイドリングの停止時間を延長し,相乗的な燃費低減効果を発揮する。この相乗効果を十分に引き出すべく,エンジンが停止して発電できないアイドリングストップ中に,蓄電したキャパシタから消費分の電力を供給する必要がある。このため,アイドリングストップに入る前にはできるだけキャパシタを満杯に充電しておきたい。一方で,減速時に多くのエネルギを回生するには,事前にできるだけキャパシタを空にしておきたい。これらの相反する要件を満たし,時々刻々と変化する走行状態に応じて各デバイスを適切な状態に保てるような,緻密なエネルギフロー制御を行っている。3.仮想開発環境について3.1全体概要自動車の制御系開発で採用されているV字型の開発プロセスにおいて,下流の検証段階で不具合が発覚した場合には大きな手戻りにつながる。手戻りを最小化するには,各段階において検証サイクルをまわす必要があり,今回複雑なシステムを短期間で開発するために,MBDを最大限活用した(Fig.3)。RequirementDefinitionSystemDesignSoftwareDesignImplementationSoftwareVerificationFig.3 V-Process in MBDElectric LoadBatterySystemVerificationVehicleVerificationこれまでにもSKYACTIV-G開発においてMBDを実践し,仮想開発環境を構築・活用してきた(3)。例えば制御ソフトウェア設計段階でMILS(Model In the Loop Simulation)環境や,制御ソフトウェア検証段階でのHILS(Hardware In the Loop Simulation)環境を構築し開発効率化を図ってきた。「i-ELOOP」の開発においても,これらのMILS・HILS環境を活用しつつ,更に仮想開発環境を充実させた。その結果,従来以上に多くの開発項目をこれまでにない短期間で完了し,高品質なシステムとして「i-ELOOP」を完成させることができた。以下では,今回新たに充実させた,システム設計・システム検証における仮想開発環境と,一部机上で完了することができた適合について記す。3.2システム設計段階での仮想開発環境システム設計とは,プロセスの上流にて定義された要件を満足するためのシステムを検討する段階である。本開発においては,燃費目標を達成するシステム構成とエネルギフロー制御のコンセプトを構築し,回路構成や各デバイスの仕様を決定する必要がある。また,よりロバストなシステムとするために,お客様の様々な使い方のデータから実用上のシーンや使用頻度などを分析し,個々の加減速の大きさや頻度,停車時間などを加味して最適なシステムとする必要がある。ここで求められる仮想開発環境の要件は,燃費を含む車両全体のエネルギフローを高速で解析できることである。そこでマツダ社内で開発・運用している,燃費検討用モデル(4)をベースとして仮想開発環境を構築した(Fig.4)。Test modelDrivermodelRoadmodeli-ELOOPsystemAPOEngineEngineControlVehicle modelSHIFTTransmissionATControlFig.4 Framework of Virtual Testing ModelBRAKEBody利用したモデルは,エンジンやトランスミッション,車両など走行に関わる主要な要素を含む仮想車両モデルであり,機械系および電気系のエネルギ収支を短時間で計算できるよう簡素に構築した。これにより動的に変化するエネルギフローを可視化しながら,お客様の走行シーンを網羅的に検討することができ,燃費に大きく影響する回生・蓄電・活用の推移を解析し,効率的なエネルギフローを検討した。デバイス容量を大きくすればするほど,より多くのエネルギを扱うことができ,より多くの走行シーンに対応できるようになるが,重量およびコストが増大してしまう。また,エネルギをどのタイミングでどのデバイスに配分するか,という制御の方法においても回生エネルギは増減する。―57―