ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)温度を予測するCAEモデルを作成する。Step 2 CAEモデルを用いて目標温度を達成できる部品仕様やエンジン制御定数を机上検討する。Step 3机上検討結果を基に製作した実機で最終確認して開発作業を終了する。このやり方により開発効率が飛躍的に向上し,より多くの技術・機種を短期間で開発できるようになった。2.2 CAEの課題と実機テスト目的の変化関連する要素が多い現象を理論式だけで数式化すると,使用目的(計算時間,精度)を満たすことが困難なケースが発生する。今回紹介する耐候試験設備で取り扱う,実車の熱収支事象をCAE化する際は,PTと車両の広範囲に及ぶ多数の部品を検討対象とし,それぞれの部品形状の影響を受けた複雑な空気の流れや熱の伝搬現象を細部まで数式化する必要があるため,モデル自体が膨大で複雑になり計算時間が非常に長くなる,あるいは十分な精度を得にくくなる傾向がある。モデルベース開発をスムーズに進めるためには,この問題を解決しCAEを実用的なものにすることが重要な課題となる。この課題を解決する取り組みでは,CAEモデルを作成する際に,実機テストで得たデータを適切に利用することが鍵となる。具体的には,実機テストで得たデータを部品間で熱が伝搬する際の境界条件として数式に組み込む手法が有効である。すなわち理論式と実機テストの情報を併用することで,短時間に予測精度の高い結果を得ることが期待できる。以上のように実機テストの役割は,モデルベース開発の展開に伴い,従来の試行錯誤的な仕様決定手段から,CAEをより実用的なものにするための情報を収集する手段へと変化し,従来と異なる領域で重要な役割を担うこととなった(Fig.2)。の状態で安定させることが要件となる。実車を用いたデータ収集方法には,実路走行テストと実験室内でのテストがあるが,前者は自然環境が不定期に変動するため精度の高いデータを安定して収集することが難しい。また,テスト可能な場所,季節,天候,時間帯が限定されテスト効率が非常に悪く,開発全体の効率向上を阻害する要因ともなる。そこで後者が望まれるが,実験室で有効なテストを実施するには実路と相関のある環境条件を繰り返し提供できる耐候試験環境が必要である。3.モデルベース開発に貢献する新耐候試験設備3.1新設備の狙いこのように実機テストの目的と試験設備への要求が大きく変化する中,耐候試験設備を新設した。新設備で調整する環境項目は,温度,湿度,走行風,日射,路面輻射とし,それぞれを実路環境に近づけるための設備仕様を選定した。3.2環境調整性能(1)温度,湿度,風速低温室と高温室を合わせて,-40℃~+55℃の室温範囲でのテストを可能とした。高温室の相対湿度は30%~80%に調整可能とした(Table 1)。Table 1 Specifications of Air ConditioningHot ChassisDyno ChamberCold ChassisDyno ChamberCold Idle TestChamberTemperatureRange+20℃~+55℃Humidity30%~80%(Less than 10%at higher temp.)Max. Wind Speed150km/h-40℃~+20℃- --20℃~+20℃- 200km/h(2)走行風風洞設備を導入し(高温シャシーダイナモ室の送風性能=最大12500m3/min),車両に均一な走行風を供給できるようにした(Fig. 3)。Fig. 2 Change of Laboratory Use2.3 CAEをサポートする実機テストの要件CAEモデルを実用的なものにするためには実機テストで得るデータが重要な鍵であることを述べた。ただしそこで用いるデータはCAEの予測結果に重大な影響を及ぼすため,データ収集テストの際には十分な精度の確保に努める必要がある。温度環境性能開発においては,テスト時の環境条件を狙いFig. 3 Cross Section of Wind Tunnel(3)日射(高温シャシーダイナモ室)日射が車両上面に与える熱負荷を自然環境と同等にするため,波長成分が太陽光に近いメタルハライドランプを使用した日射装置を採用した。日射量は400W~1300W/m3可変式とした。―102―