ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報(4)路面輻射(高温シャシーダイナモ室)表面温度を85℃まで調整できる床面ヒートマットを採用し,路面からの照り返しを再現した(Fig. 4)。Fig. 4 Heat Mat for Appropriate Floor Temperature(5) 4WDシャシーダイナモ非駆動輪を含む4輪の回転が気流に与える影響を再現した。3.3レイアウト高温,低温それぞれのシャシーダイナモ室と低温アイドルテスト室の3つの試験室を1階に配置した(Fig. 5)。Fig. 5 Ground Plan3.4テストの効率化設備の稼働率を高めるため,低温実験室におけるソーク(テスト前の車両冷やしこみ)時間の短縮,シャシーダイナモの運転稼働率向上,省力化による車両準備時間の短縮などを実現する機能を検討した。3.5環境負荷低減への配慮冷凍機をブラインチラー2台,及び冷水チラー3台に分割し,発熱負荷に応じて稼働台数を決めるシステムを採用して消費電力を低減した。4.新耐候試験設備活用事例4.1 FTTPの開発要素新設した耐候試験設備の実路再現性能をモデルベース開発へ活用した代表事例としてFTTP(Fuel Tank TemperatureProfile=タンク内燃料温度)開発を紹介する。本件は,高温シャシーダイナモ室の活用例である。米国EPA ( United States Environmental ProtectionAgency)が定める蒸発燃料規制に関する法規のひとつがFTTPである(1)。この規制では,まず定められた環境条件(外気温度35℃以上,路面温度51.7℃以上,晴天)において72分間のFTTP走行モードを路上走行した後の燃料温度を計測する。次に実験室にて,その燃料温度を再現させながら,燃料タンクと燃料供給部品から蒸発して外部に放出される燃料蒸発ガス量を計測するもので,この量が規制対象である。燃料温度自体は規制対象ではない。この規制においては,燃料温度が高いほど蒸発量が多くなり,漏れ対策をより強化しなければならなくなる。したがって,伝熱量を抑制する排気管のレイアウトや遮熱板仕様,発熱量が小さい燃料ポンプ構造やその制御,燃料系部品へエンジンルームの熱を伝搬しにくい空気流の制御構造などを車両トータルで検討することがFTTPの開発要素となる。4.2 FTTP開発CAE化の背景FTTP開発においては,燃料温度と各関連部品,雰囲気温度を計測し考察する。これらのデータ収集作業は,従来米国のテストコースを走行して取得してきた。しかし,現地へ出向いた時の天候によっては気温や日射などの条件が整わずテストが思うように進まないケースや,走行中に変化する風速,風向,日射などによりデータが変動するケースなど,実路テストでは不可避な問題があった。またテスト実施時期が夏季に限定されるため,開発計画によっては必ずしも現地テストの際に狙った仕様の部品試作が間に合わないという問題も生じた。これらはテストを非効率にするばかりでなく,仕様の検討不足を招き,開発後期の予想外の追加対策や過剰品質により不要なコストアップのリスクを高める原因ともなっていた。また,FTTP以外の開発にも併用する試作車を海外テストで長期間占有することで開発全体の効率に悪影響を及ぼす問題もあった。このようなFTTP開発における一連の問題を解消し,適正な仕様を早期に決定できるようにするため,CAEで燃料及び各部温度を予測して仕様検討するモデルベース開発への移行に取り組んだ。4.3 FTTP開発CAE化の課題燃料温度を決める熱の流れは広範囲にわたる(Fig. 6)。これら全てを計算しようとするとエンジンルーム内や車両周りの流れ,ラジエータでの熱交換,排気ガス流れ等の3次元の非定常計算が必要となるが,その計算には非常に時間がかかる。特にFTTPは走行時間が長く,計算時間が膨大になるため開発への適用は難しい。そこで,3次元の非定常計算が必要な排気管の温度,タンク回りの空気の温度や流速,燃料ポンプの発熱量等は実験値を境界条件として与え,タンク回りの熱の移動のみを計算して計算時間を短くする手法に取り組んだ。―103―