ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報動力の統合的な運用技術を一端として,より高度な技術への革新が要求されている。そこでマツダでは,パラメータ最適化技術を車載部品特性のモデリング技術に組み合わせ,製品開発へ適用する試みを行っている。例えば,遺伝的アルゴリズムとエンジン性能モデルとの組み合わせにより,非線形特性領域でのエンジンの諸元設計が行われている。(1)あるいは多目的最適化手法と構造強度モデルの組み合わせにより,車両の複数方向の壁面衝突における運動エネルギー吸収性能の設計が行われている。(2)これらのモデルをベースとした開発手法は, CX-5などSKYACTIV TECHNOLOGYを適用した商品のコンセプト設計(3)に用いられ,実機測定結果とモデルの整合取りも施されたことで,有効性が向上しつつある。本稿では,電動車両の構想設計におけるモータ/インバータ仕様設計のモデルベース開発に取り組むために,新たに構築した動力特性計算手法と,その有効性の検証結果について紹介する。グは既にスタンダードな技術になっている。そこで今回,マツダでは必要な試行錯誤をスキップするのではなく,極めて高速に実行すること,更には目的志向で設計を洗練することをねらいとし,モータの電磁界解析モデルと最適化アルゴリズムを高速計算サーバ上で組み合わせることに取り組んだ。モータの制御ストラテジはさまざまあるが,基礎検討として最も低発熱となる効率最大運転条件を自動探索する手法の構築を行った。またモータトルクや電流や電圧などのリアルタイム挙動特性を構想設計段階で掌握することに取り組んだ。これによりハイブリッド自動車や電気自動車のように電源電圧や動作温度が不安定に変動する製品でも,挙動をあらかじめ網羅的に検討し,常に最適な駆動条件で運転を行うことができれば,モータ/インバータの動作効率が向上し,燃費や電費性能の向上になる。更にモータによる制駆動力の高応答操作により「優れた環境安全性能」をお届けすることにつながると考える。2.電動系領域のMBD需要車両駆動用原動機としてモータ/インバータを用いる場合,下記の電気系固有の特長を活かす検討がなされる。(1)全速度域で正負の大トルクを高応答で発揮する。(2)車両の運動エネルギーを回収する。(3)運用において排出ガスや騒音を生じない。これらの効果を最大化するには,電気駆動システムの仕様設計が重要になる。例えば,自動車は独立移動体で,走行中のエネルギー供給が現在は不可能であるため,運用中に蓄電デバイスの過充電や過放電が生じないように,電気エネルギー収支を計画的に管理する必要がある。また,その動力特性は,電源電圧や,モータ/インバータそのものの動作温度とも強い相関があるため,過熱時は機器保護のために出力制限を講じる必要がある。上記の事例を含め,電動系への要求機能は多岐にわたり,最大性能の向上のみならず,発熱時の性能安定性などを一元的に実現することが求められる。しかしながらIPMモータの電磁界断面設計パラメータ群の間には,複雑な交互作用があり,所望の動力特性を発揮する究極のモータ設計を獲得することは容易ではない。また一つのモータに対して,効率最大となる交流運転条件は一対一で決まるはずであるが,制御パラメータ間にも交互作用があるために,その解を試行錯誤なく得ることは難しい。一方,系統電源のように電圧が安定し,また設置環境温度や運用温度が一定であれば,電気系は略線形の挙動を示すことがよく知られている。自動車以外の用途のモータ/インバータ製品においては,モータ制御の自動チューニン3.設計の最適化計算システムの概要今回構築した計算システム機能の全体像をFig. 1に示す。数十個の入力変数(設計パラメータ)や出力変数(動力性能値)間の寄与度や交互作用を解析するため,変数間の関係の分析機能を持つIDAJ社のmodeFRONTIERをプラットフォームに用いた。Fixed widthconstraintsDatabaseInitial value settingFixation of theobjective functionSet of input variables(Design Parameter group)Power property calculation(Equivalent circuit and finite element method)Output variable(Performance value group)Design Optimization(Trial and error algorithm)Fig. 1 modeFRONTIER Work Flow ExampleAutomaticcirculation path本計算システムの機能検証のために,準備したハードウェアの主要スペックを以下に記す(Table 1)。Table 1 Calculation System SpecificationsPRI/POSTPCCalculationsserverStorageWindows, 64Bit, Intel Xeon 1 CPU Dual Core, 8GBRAM/Core, 3GHzLinux, Intel Xeon 32 CPU Quad core,4GBRAM/Core, 2.93GHzTemporary area: 500GB, Database area: 4TB―107―