ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31
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マツダ技報 2013 No.31
マツダ技報No.31(2013)3.1各計算機能の概要(1)計算全体の進捗管理,およびデザインの最適化modeFRONTIERは,数値間の関係の分析に加え,全計算の進捗状況管理とデザインの最適化を行う。modeFRONTIERは,一連の計算を実行した後,入力変数と対になる出力変数をデータベースへ記録し,1サイクルの完了を判断する。その後,次のサイクルの計算を行うために出力変数と目的関数とを照合し,より性能向上が期待できる方向へと入力変数の組み合わせを自動刷新して,再計算のサイクルに入る。よってFig. 1の通りフローは,永久循環型となっている。デザインの試行錯誤パターンは,アルゴリズムとしてあらかじめ備わっているが,それぞれの手法には固有の進化パターンの偏向があり,性能向上を実現させる上で障害になりうる。そこで遺伝的アルゴリズム・実験計画法・ゲーム理論などのアルゴリズムの複合的な組み込みを行った。(2)モータの電磁界解析と形状変形JSOL社のJMAG-Studioが,modeFRONTIERより設計パラメータ(入力変数)を受け取り,電磁界解析を行う。この段階では,数学的な正弦波電流源に対するトルク特性と損失特性を回転数や電流振幅や電流位相ごとに算出する。デザイン刷新のたびに,設計者による断面形状の作図を要すると,設計者が従事できない場合に計算が停止する。そこでJMAG-Studioのモータテンプレート機能をベースに用い,modeFRONTIERが数値操作し,自動で作図するようにプログラムを改造した。例をFig. 2 (a)に示す。そこで自由な変形と形状エラーの潰し込みを両立するための拘束式を追加した。これにより当初,単純にコンピュータが自動生成したデザインの中で,設計者が見て実際に回転可能なデザインは7%程度しかなかったが,成功率を99%以上に向上した。モータ電磁界解析において一般的には,解析精度とメッシュには相関があるため,解析後に隣接要素間の数値連続性を評価し,不連続性が著しい場合はメッシュ追加により再計算する自動メッシュ解析手法が主流である。さまざまな断面形状を試行錯誤する場合,本来は自動メッシュを用いることで高精度の解を期待できるが,解析成功に到るまで計算コストが数倍に増加する要因になる。そこで予備検証段階でモータの自動メッシュ解析を多数行い,高調波成分の解析精度を確保するためにメッシュを細かく切るべき領域と,その粒度を見出した。この手法を適用したメッシュ生成を行うことで,メッシュの追加,修正を行うことなく,1回での計算実行を実現した。Fig. 3 (a)にメッシュを追加手法での最終的なメッシュイメージを示す。Fig. 3 (b)には同じ断面設計に固定メッシュを用いた場合を示す。ノウハウを適用した(b)によりメッシュ数は少ないながらも,ほぼ同等の計算結果を得た。Stator CoreRotor CoreShaftMagnetSlot forWinding(a) Adaptive meshing method (b) Fixed meshing methodFig. 3 Comparison of Motor’s FEM Mesh of AdaptiveMethod and Fixed Method(a) Normal (b) ErrorFig. 2 Motor’s 2D Electromagnetic Field CrossSection FEM Model Sampleここで,モータテンプレートはステータとロータの幾何学的な形状の整合性を考慮せず,単純に数値を操作するため,設計変数群の組み合わせが不適であると,例えばロータに埋設されているべき磁石がはみ出してステータに食い込み,回転不能な状態に陥る場合がある。例をFig. 2 (b)に示す。またJMAG-Studioは,エラーデザインであることを認識できずに解析を実行するため,不要な解析業務が発生する上,無用の出力データの混在により設計改良の試行錯誤が乱れてしまう。(3)挙動モデルの作成JMAG-Studioによる電磁界解析の解析結果が数百以上集積されると,JSOL社のJMAG-RTが,それらの点群情報を数枚のマップへ統合し,MathWorks社のMatlab/Simulink形式で挙動モデルを生成する。JMAG-RTの挙動モデルの生成方法には,プリミティブな検討用の高速版から,比較的重い収束計算を要する拡張版までさまざまな手法があるが,IPMモータにおいて空間高調波による印可電圧やトルクの入出力の不整合を無視すると,トルクと損失の予測精度が低下するため,空間高調波型へ統一した。モータの実機では,モータのスロット高調波やインバータのスイッチングにより歪の加わった交流の影響で,トルク変動やサージ電圧などが生じるが,挙動モデルを用いることで,これら動的特性の検証を可能にした。―108―