ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31
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マツダ技報 2013 No.31
No.31(2013)マツダ技報ている(1)。日本における例として,国土交通省が主導し,自動車メーカ全社が参加するASV-5プロジェクト(第5期先進安全自動車推進計画)があり,車車間通信を利用した安全運転支援システムの検討が行われている。これは,車車間通信により周辺車両の存在を検知することで,物陰に隠れて見えにくい接近車両の情報を事前にドライバに伝えたり,衝突する危険性がある場合に注意を喚起したりすることで,交通事故を防止することをねらいとしている(2)。このような車車間通信,路車間通信を活用して交通事故を減らそうとする取り組みは,自動車のみならず,道路空間を共用する他の交通参加者(鉄道や歩行者など)へ展開・適用することで,より安全・安心な道路交通社会の実現に資すると期待される。広島市では,路面電車が市民の足として定着しており,一日平均約15万人の利用がある。近年,路面電車はエコな交通手段として世界的に見直される一方,自動車はさらなるエコ化が進んでいる。この二つの交通形態が,それぞれのメリットを活かしつつ共存できる交通体系を作るために,東京大学,広島電鉄(株),(独)交通安全環境研究所,マツダ(株)が協働して,鉄道とクルマとの安全な連携を目指して共同研究に取り組んできた。4者は,路面電車と自動車との間の無線通信に車載センサを組み合わせることで,路面電車と自動車が道路空間を共用する場所において自動車と路面電車双方の安全性が高まるシステムを構築した。2013年9月から「広島における世界初の路面電車-自動車間通信型ASV」としてITS公道実験を行うと共に,ITS世界会議東京2013のポストコングレスツアーとして試乗会を行った。この取り組みの中でマツダは,自動車と路面電車の連携による安全運転支援システムや,通信利用型安全運転支援システム(以下,通信利用型システム)と車載センサ検知型安全運転支援システム(以下,車載検知型システム)の連携システムのコンセプト検証・機能開発,また,ドライバへ分かりやすく情報を伝達すFig. 1 Mazda Atenza ASV-5る技術の開発・検証を行うことを目的に「マツダアテンザASV-5」を開発した(Fig. 1)。本稿では,「マツダアテンザASV-5」のシステム概要,通信利用型システムと車載検知型システムの連携の考え方,直感的に理解できるHMI設計の考え方,搭載した安全運転支援機能について報告する。2.「マツダアテンザASV-5」の開発「マツダアテンザASV-5」を開発するにあたり,以下の機能を実現することをねらいとした。2.1通信利用型システムと車載検知型システムの連携マツダは,ドライバが正しく認知・判断することをサポートするために,見えない危険も含めた危険対象の360°認知支援を目指している。そこで,今回は通信利用型システムと車載検知型システムを連携させることで360°認知支援の機能を構築した。Table 1は,車車間通信と車載センサの特徴を比較したものである。この表に示すように,車車間通信は,広範囲の対象物を検知できる,物陰にいる対象物を検知できるという特長がある一方で,現状では検知精度(位置精度)はGPSの測位精度に依存し,GPS電波の受信状態によっては10m以上の誤差が生じる場合がある。これに対して車載センサは,車車間通信で得られる対象物体の位置精度よりも高い精度で物体までの距離を検知することが可能である一方で,他車両や建物等の物陰にある危険対象の検知は不可能である。このような車車間通信と車載センサの特徴を鑑みて,以下のような考え方で通信利用型システムと車載検知型Table 1 Feature Comparison between V2V Communication and Onboard SensorsV2V communicationOnboard sensorsMaximum detectionlength◎Max. 1000m at line-of-sight (varying due todriving environment)Detection angle◎360deg○Detection in a blindarea (behind other car)Detection in a blindarea (behind building)◎Detectable (having no influence on shadingvehicles)○Detection accuracy○Detectable within about 80m even in worstcasecondition of communicationFrom about 1m (by quasi-zenith satellite GPS)to about 10m (by ordinary GPS)○About from 20m to 200m (varying due tosensing methods)About from 20deg to 200deg (varying due tosensing methods)×Undetectable at not-line-of-sight×Undetectable at not-line-of-sight◎About 5% of detection length (varying due tosensing methods)―119―