ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

ページ
138/228

このページは マツダ技報 2013 No.31 の電子ブックに掲載されている138ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

マツダ技報 2013 No.31

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報特集:ITS世界会議24ドライバの筋活動に基づく車線維持操舵支援制御の研究A Study of Lane Keeping Assistance by Steering ControlBased on Muscular Activity要約高橋英輝*1菅野崇*2岡﨑俊実*3Hideki Takahashi Takashi Sugano Toshimi Okazaki前方認識カメラによって得られる車線情報を利用して,ドライバのステアリング操作を支援する車線維持支援システム(LKAS:Lane Keeping Assistance System)を対象として,走行シーンに最適な操舵支援の実現を目指している。操舵支援の良し悪しを評価するにあたり,LKASが働いている際の操舵フィーリングを,上肢の筋活動に着目して分析した。その結果,専門家の主観評価が高いLKASは,左右対称関係にある筋の同期的活動や操舵を止める方向に作用する筋(拮抗筋)の活動が増加することなく,操舵方向に作用する筋(主動筋)の活動が減少していることが分かった。この現象を解釈することによって得られた仮説を基に,道路曲率に応じて操舵軸周りの粘性特性を制御する操舵支援制御手法を考案した。この支援制御により,直進走行時や定常旋回時のような一定の操舵角を保持するシーンでは,保舵の楽さと安定性を,コーナ切り込み/切り戻し時のような操舵を行うシーンでは,操舵の滑らかさを向上させることができた。SummaryLane Keeping Assistance System (LKAS) controls an electric power steering that assists driver’ssteering operations to the lanes observed by an on-board camera. LKAS performance was evaluatedin terms of steering stability including the ease of steering, and electromyogram (EMG) of thedrivers’arms was analyzed. The result showed that stable steering control prevents synchronouscontractions of symmetrical muscles of arms, and reduced the action of the agonists withoutincreasing the use of the antagonists. Based on the result, a new steering control logic was setup,which modifies yaw motions and steering viscosity, improving steering smoothness and stability byless force.1.はじめに近年では,自動車の周辺環境を認識する技術が発達し,それを利用した運転支援システムが数多く開発されている(1)~(4)。その中の一つとして,車線維持支援システム(LKAS)が商品化されている。LKASは,車載カメラで前方の車線を認識し,電動パワーステアリングのアシストトルクを制御することによって,ドライバのステアリング操作を支援する機能をもつ。従来のLKASの評価は,主に長時間運転におけるドライバの肉体的負担や精神的負担の軽減という観点で行われてきた(5)~(7)。しかしLKASは,通常の走行中にも常に操舵反力に影響を与えるシステムであるため,ドライバのハンドル操作との干渉が発生し(5) ,操舵フィーリングの悪化のために機能を活用しないケースも生じる。そのため,LKASの機能を活用する/しないを含め,本当に有効な支援とするためには負担軽減の観点のみでなく,操舵フィーリングの観点でも良好な支援としなければならない。これまでも操舵フィーリングのような感覚量を物理量で定量化する取り組み(8), (9)は行われてきたが,評価指標として利用できるレベルにまで至っていない。また,操舵支援制御設計に活用するためには,評価指標の論理的解釈も必要となる。本稿では,LKASの操舵支援が働いている際の操舵*1~3技術研究所Technical Research Center―131―