ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31
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マツダ技報 2013 No.31
マツダ技報No.31(2013)フィーリングの良し悪しを評価するために,ハンドルと腕の動き,そのときの筋活動とを照らし合わせて分析を行った。更に,ドライバの筋活動による特性変化に基づく操舵支援制御手法を考案し,その効果検証を行った。なお,本研究で行った全ての被験者実験は,試験開始前にインフォームドコンセントを得て行った。2.操舵フィーリングに関する主観評価LKASの操舵支援による操舵フィーリングの変化を把握するために,走行評価によるフリーコメントを収集した。被験者は,運転支援システムの開発に従事している20代から50代の男性社員13名とした。評価は,LKASが装着されている市販車A車とB車の2台を用い,それぞれLKAS OFFとONの順で乗り比べた。A車のLKASの支援の特徴は,常時車線中央へ誘導するものであり,B車のLKASの支援の特徴は,車線と車両進行方向のなす角度をゼロにするように誘導するものである。試験路は,直線及び左旋回コーナ,その間を緩和曲線で結んだテストコースである。走行後に収集したフリーコメントを,ビジュアルテキストマイニング(10)を利用して,3シーン(直進走行時,定常旋回時およびコーナ切り込み/切り戻し時)に分けて分析した。その結果,LKASの支援によって操舵フィーリングに変化が生じたのは,下記の点であった。(a)直進走行時および(b)定常旋回時・保舵の楽さ(Effortlessness)・保舵の安定性(Stability)(c)コーナ切り込み/切り戻し時・操舵の滑らかさ(Smoothness)上記の観点で,主観評価結果を“Good / Fair / Poor”の3段階でまとめた結果をTable 1に示す。LKASの支援によって,主観評価が向上した場合はGood,低下した場合はPoor,変化を感じなかった場合はFairとした。主観評価結果のt検定を行い,5%水準の優位差があることを確認した。次に客観データとして,操舵角と操舵トルクを確認した。計測には脱着式の操舵角力計を用い,被験者は主観評価を行った13名のうちの2名とした。計測結果の一例をFig. 1に示す。直進走行時(図中(a)部),LKASの支援によって,A車は操舵角と操舵トルクの変動が大きくなり,B車はその変動がわずかに小さくなる。この結果は,保舵の楽さと安定性の主観評価結果と相関がとれる。定常旋回時(図中(b)部)では,LKASの支援によって,A車は保舵に必要な操舵トルクが大きく減少するのに対し,B車の減少量はわずかであり,保舵の楽さの主観評価結果と一致する。しかし,保舵の安定性を操舵トルクの変動で比較すると,A車,B車ともに,LKAS OFFとONで大きく変化しないにもかかわらず,A車とB車で主観評価結果が異なる。コーナ切り込み/切り戻し時(図中(c)部)では,A車はLKASの支援によって,操舵角に対する操舵トルクの立ち上がり方の変動が大きくなり,これが操舵の滑らかさの主観評価を悪化させている要因の1つと考える。一方でB車は,LKAS OFFとONで大きな変化はないが,操舵の滑らかさの主観評価は良好な結果となっている。以上のように,操舵角と操舵トルクにより主観評価を説明できる部分もあるが,これらだけでは主観評価を説明できない項目もある。そこで次章では,ハンドル操作時のドライバの腕の動作に着目した分析を行う。(a) Straight driving(b) Steady turningTable 1 Subjective Evaluation Results onVehicle A and BScenes Evaluation axes Vehicle A Vehicle BEffortlessness Poor GoodStability Poor GoodEffortlessness Good FairStability Poor Good(c) Turning or reversing a wheel Smoothness Poor GoodSteering wheel torque [Nm]54321(a)Straightdriving(c)Turning orreversinga wheelUneven(b)Steadyturning0LKAS OFFLKAS ON-1Variable-5 0 5 10 15 20 25Steering wheel angle [deg]DecreaseSteering wheel torque [Nm]54321(a)Straightdriving(c)Turning orreversinga wheelSmooth(b)SteadyturningDecreasea little0LKAS OFFLKAS ON-1Stable-50510152025Steering wheel angle [deg]Vehicle AVehicle BFig. 1 Change in Steering Characteristics by LKAS3.筋活動による評価(11)3.1実験方法LKASの操舵支援によるドライバの腕の動作の変化を把握するために,上肢の筋電位を計測した。計測したポイントはFig. 2に示す11か所の皮膚表面筋電位である。計測器はNEC製サイナアクトMT11を使用した。計測した筋電位は,整流後,事前に計測した最大随意収縮(MVC : Maximum Voluntary Contraction)で正規化した後,ローパスフィルタによって平滑化した。試験車両と試験路は,2章と同様である。被験者は,2章で操舵角と操舵トルクを計測した2名とした。慣熟走行後,自動速度制御装置の設定速度を―132―