ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)(b)定常旋回時の筋活動A車,B車ともに,LKASの支援によって,主動筋である右三角筋前部(R-in-1),右上腕三頭筋(Rout-2)および右橈側手根伸筋(R-in-3)の活動が減少する。特にA車の減少量が大きく,保舵の楽さという観点で良好に見えるが,拮抗筋である左上腕三頭筋(L-out-2)の活動が増加している。筋の特性から活動が大きいほど,腕の剛性は大きくなる(13)。この事実から考察すると,A車のようにLKASの支援によって主動筋の活動が大幅に減少すると腕の剛性が小さくなるが,それに合わせて車両の特性に変化がないと,腕を含めた車両の安定性が低下する。この車両の安定性低下を補うために,ドライバが主動筋と拮抗筋を同時に活動させることによって,腕の剛性を高める行動をとったと考える。(c)コーナ切り込み/切り戻し時の筋活動上述の(b)定常旋回時と同様に,A車,B車ともLKASの支援によって,主動筋の活動は減少するが,A車の場合のみ,拮抗筋の活動が増加する。一般的に,主動筋はある動作をする時に作動させる筋であり,拮抗筋はその動作の調節に作動させる筋である。このことから,A車はLKASの支援によって滑らかな操舵ができなくなり,拮抗筋の活動による調節作業をLKASOFFの時以上に行わなければならないため,拮抗筋の活動が増加したと考える。以上の評価から, (a)直進走行時の保舵の楽さと安定性は,左右対称筋の同期的活動量と相関が高く,また, (b)定常旋回時の保舵の安定性や(c)コーナ切り込み/切り戻し時の操舵の滑らかさは,主動筋や拮抗筋の活動量と相関が高いことが分かった。4.制御ロジック開発(11)4.1操舵フィーリング向上のための操舵支援制御3章の考察から,LKASの操舵支援によって保舵の楽さや安定性,操舵の滑らかさの性能を向上させるためには,下記の仕組みが必要であると考える。・左右対称筋の同期的活動の原因となる操舵系のふらつきを発生させない,または抑える。・車線形状に応じた支援によって主動筋の筋活動を低下させる場合,その筋活動の低下によって生じる腕の剛性低下を補償する。上記の実現案として,操舵軸まわりの粘性特性を,シーンに応じて制御することが有効であると考えた。具体的には,車線が直線と判断された場合は,ハンドルのふらつきを抑制するために操舵軸まわりの粘性特性を高め,コーナリング中は,旋回するために必要な操舵トルクを減少させるよう操舵方向へのトルク支援を行うのと同時に,その減少させた操舵トルクに応じた粘性補償を行うことによって,保舵の楽さと安定性および操舵の滑らかさを向上させることとした。4.2制御ロジック概要制御ロジックは,前方認識カメラと車載センサから得られた情報に基づき操舵の支援量(アシストトルク)を決定する構成であり,概要をFig. 4に示す。4.1節に示した制御手法を実現するために,図中Calculation of target damping torqueと示した部分の処理を設けた。この処理は,式(1)にて粘性補償トルクを算出する。?????'T ? ?C・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)target_dampingtargetここでγtargetは,車両が車線を走行する際に目標とするヨーレイトであり,曲率R,クロソイドパラメータAを用いて算出されるものである。この目標ヨーレイトに応じた粘性ゲインCを変化させることによって,車線形状に応じた操舵軸回りの粘性特性が変化することになる。この粘性補償トルクをアシストトルクに加えることにより,LKAS全体の出力とする。ForwardsensingcameraCurvature RClothoid ACalculationof targetyaw rateVehiclesensor Velocity VYaw rateγSteering rateδ’Target yaw rateγtargetCalculationof targetassisting torque++Calculationof targetdamping torqueTarget assisting torqueT target_assistingCalculationof targetLKAS torqueTarget damping torqueT target_dampingFig. 4 Configuration of Control LogicTargetLKAStorqueT target_LKAS4.3制御性能比較4.2節の制御ロジックを実装した試作車両を用いて,2章,3章と同様に主観評価と筋活動評価を行った。主観評価結果をTable 2に示す。主観評価では,LKASの支援によって全ての評価軸で向上したことが確認できた。Table 2 Subjective Evaluation Results on Test Vehicle(a) Straight driving(b) Steady turningScenes Evaluation axes Test vehicleEffortlessnessStabilityEffortlessnessStabilityGoodGoodGoodGood(c) Turning or reversing a wheel Smoothness Goodまた,操舵角(SWA),操舵トルク(SWT),筋電位(L-in-1)~(R-out-3)の時系列データの一例を―134―