ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)そして,このたび更に諸性能を向上させたプレマシーハイドロジェンREレンジエクステンダーEV(Electric Vehicle)を開発した(Fig. 1)。本稿では,この車両の開発の狙い,開発技術について紹介する。2.開発の狙い2.1クリーンエネルギー航続距離の向上プレマシーハイドロジェンREハイブリッド(以下従来車)では,水素エンジンにより走行中の燃料消費に基づくCO2発生ゼロでの航続距離200㎞を達成した。本車両では,水素エンジンの熱効率の向上及びエンジン制御最適化により水素運転時の航続距離の向上を図り,更に高電圧バッテリの大容量化とプラグイン化により,水素や電気などのクリーンなエネルギーで走行可能な航続距離(以下クリーンエネルギー航続距離)の大幅延伸を狙いとした。具体的には,クリーンエネルギー航続距離350㎞以上を目標とした。また,日常の走行はEVのみで走行できるように,100㎞以上のEV走行可能距離を目標とした。なお,プラグイン化に伴い,水素と電気の両エネルギーが利用できることから水素自動車の利便性向上が果たされたため,従来車で採用していたガソリン併用システムは廃止した。2.2熱効率の向上と排気エミッション性能の両立水素エンジン車は,燃料中に炭化水素(以下HC)が存在しないため排気エミッション(以下EM)上の課題は燃焼により生じるサーマル窒素酸化物(以下NOX)の発生のみである。NOX排出量の低減技術として,空気過剰率(以下λ)=1で運転し三元触媒による浄化技術が使用されてきた(4)。この方法は,NOXの浄化には極めて有効であるがλ=1で運転する必要があるため,熱効率では希薄燃焼に劣る。そこで熱効率の向上とEM性能を両立させるため,希薄燃焼下でのNOXを浄化するシステムを開発することを狙いとした。3.開発結果3.1クリーンエネルギー航続距離の向上(1)熱効率の向上水素は内燃機関の燃料として用いる場合,Table 1に示すように,混合気中の水素の割合がλ=1で約30%を占めるため,予混合で燃料を供給すると体積効率の低下を招く。対策としては吸気行程終了後,燃料を噴射する筒内直噴方式が有効である。REは,構造上燃焼圧力のかからない位置に直接噴射弁を設置することが可能であり,低圧での噴射が可能となる。Fig. 2に示すように,噴射圧0.6MPaの低圧噴射弁を長軸の位置に配置した。なお,低圧で噴射できるメリットは,特に高圧タンクを燃料タンクとして用いる場合,低圧まで燃料を消費できることである。本開発においても,低圧直接噴射の水素REをベースとした(5)。1)希薄燃焼Table 1に示すように,水素は可燃混合気範囲が極めて広いためこの特性を活用して超希薄燃焼が可能である。希薄燃焼はλ=1燃焼と比較して,比熱比の上昇や燃焼温度の低下による冷却損失の減少から正味熱効率が向上する要素がある。反面希薄燃焼は,燃焼速度が低下し,等容度が低くなることや,出力が低くなることから相対的に摩擦損失の割合が増すことから正味熱効率が低下する要素もある。したがって正味熱効率(以下ηe)は,これらの要素がバランスした点で最大値を示す。Fig. 3に示すように,本エンジンでは,λ=2.3~2.5においてηeはベストとなった。H2 Gasolinechemical formulaH2 C7.5H17Minimum Ignition Energy(mWs)0.020.24Combustible Limit (Vol %)4-751.0-7.6Adiabatic Flame Temperature attheoretical mixture(deg.C)20452200Laminar Flame velocity attheoretical mixture(cm/sec)26540Volume percentage of Fuel inMixtureat theoretical mixture (Vol %)29.531.7Heat value at theoretical mixture(MJ/m3)2.983.55ηe (%)Table 1 Characteristics of HydrogenInlet Port5%Outlet PortHydrogenFig. 2 Hydrogen RERotor Hosing2000rpm (WOT)RotorSpark PlugRotation0.5 1 1.5 2 2.5 3λ(‐)Fig. 3 Lean Characteristics of B.T.E―138―