ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報論文・解説29歩行者頭部保護性能の市場事故時傷害低減効果の研究A Study on Effect of Pedestrian Head ProtectionPerformances on Pedestrian Injuries要約河口健二*1石橋篤*2尾川茂*3Kenji Kawaguchi Atsushi Ishibashi Shigeru Ogawa歩行者事故時の傷害低減のために,ボンネット等に衝突した時により大きなエネルギー吸収ができる車体構造を,自動車メーカ各社は開発,商品化してきている。衝撃エネルギーを吸収して傷害を低減するためのこの安全性能は,日本ではJNCAP(Japan New Car Assessment Program)にて,その他各国NCAP(New Car Assessment Program)にて評価されている。本稿では,その歩行者頭部保護性能が歩行者事故時の傷害発生率低減に貢献していることを,日本市場事故全体を見たマクロ的な視点で定量的に分析し明らかにした。また,マツダの事故分析手法,活用方法についても紹介する。SummaryBody structures that could absorb more impact energy from a pedestrian have been developed tomitigate the degree of injuries in the real-world pedestrian accidents. The energy absorptioncapability is evaluated by various NCAP systems around the world, such as JNCAP in Japan. Inthis paper, it was statistically clarified by statistical accident data analyses that a better pedestrianhead protection performance could contribute to reducing the rate of pedestrian injuries, fatalinjuries in particular. In addition, the techniques Mazda has utilized to analyze accident data andmake effective use of analyzed results were outlined.1.はじめに近年,日本における交通事故死者は低下傾向にあり,平成24年には4,411名となっている。しかし,その中での歩行者比率は2002年の28.8%から,2012年には37.0%へと増加し,その絶対数は1,634人である(1)。米国では2010年の交通事故死者32,885人のうち,歩行者比率は13%だが,絶対数では4,280人である(2)。中国では2011年の交通事故死者62,387人のうち,16%の9,891人が歩行者となっている(3)。これらの歩行者の事故を低減するためには,人,環境,クルマの継続的改善が必要である。人の面からは,歩行者の反射材利用促進,運転者の脇見防止啓発など,環境面からは,道路照明の設置,歩車分離信号の設置など,さまざまな歩行者事故削減の施策が実施されつつある。クルマとしても,前方視界の改善,夜間に遠くの歩行者まで見えるようにライティングの改善などに取り組んでいる。そのようなさまざまな努力により,歩行者事故は減少してきているが,それでもなお,歩行者事故は多く発生している。そのため,万一歩行者事故が発生し,歩行者の身体が車体に衝突しても,できるだけ,その衝撃エネルギーを吸収し,傷害を低減するようなクルマの開発も行ってきている。その開発を行うに当たり,各国の歩行者事故の特徴について国際比較の研究(4)(5)を行うとともに,歩行者保護性能の効果を検証する研究も試みられている(6)(7)(8)。ここでは,日本の市場事故分析を行い,歩行者頭部保護性能が,市場の歩行者事故時の傷害低減に効果を発揮していることを明らかにしたので報告する。また,事故分析手法,活用方法についても合わせて論じる。2.歩行者頭部保護性能自動車事故対策機構(NASVA)において,自動車アセスメント(JNCAP),すなわち,新型車の安全性能評価が実施されており,その評価項目の一つとして* *1衝突性能開発部2(株)マツダE&TCrash Safety Development Dept.Mazda Engineering & Technology Co.,LTD.*3国立高等専門学校機構呉工業高等専門学校Kure National College of Technology―161―