ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)2003年度から歩行者頭部保護性能試験(9)が導入されている。2011年度からは歩行者脚部保護性能試験も開始されているが,評価された車種が少なく十分な事故分析ができないので,ここでは頭部保護性能の分析に焦点を絞った。歩行者頭部保護性能試験は,自動車が時速44km/hで歩行者に当たって,歩行者頭部がボンネット,カウルグリル,Aピラー,フロントウインドウなどに衝突することを想定している。大人および子供の頭部を模擬したインパクタを該当車体部位に時速35km/hの速度で発射し,その頭部インパクタが受ける衝撃の測定結果から頭部傷害値を評価するものである。頭部に重大な傷害を受ける確率(AIS*が4以上)が約50%(HIC** 1436)の得点1.67を基礎点とし,その確率が約10%(HIC876)の得点3.33以上満点4点までをレベル5として,その間を4等分した5段階で評価されている(9)。今回の分析では,この得点を性能値として用いた。歩行者頭部保護性能のJNCAPスコアのトレンドをFig. 1に示す。横軸はテスト実施年度である。全体的に,スコアが上昇していることがわかる。界トップレベルの充実度といえる。これまでもさまざまな視点でのマクロ事故分析を行ってきている(11)(12)(13)。本稿では,このデータを用いて分析を行った。日本のミクロデータとしてはITARDAがつくば市周辺で調査した事故データがあるがサンプリングされたもので,1件ごとの事故の詳細を分析できるが,今回のような統計的な分析にはデータ数が不十分である。(2)海外米国のNASS-CDS ,ドイツのGIDAS ,中国のCIDASなどいくつかの国に存在,データ収集,分析が行われている。ただ,人身事故全数でなく,サンプリングされた一部の事故を詳細に調査したミクロ事故データとなっている(14)。もちろん,これらの事故データを基に事故の要因,傷害の状況,対策案の検討が行われているが,今回のような統計的分析はあまり活発に行われていない。3.2歩行者事故概観事故は,さまざまな角度から分析可能であるが,ここでは,まず,自動車側の運転行動類型である直進,右折,左折という視点と歩行者の傷害程度である死亡,重傷,軽傷という視点での分析をした。対象は,2012年の普通乗用車,軽乗用車と歩行者の事故である。傷害程度別件数でみると直進,右折,左折のいずれも,軽傷の事故が最大,行動類型で見ると直進時が最大であるが,右折時も多くの事故が発生していることがわかる(Fig. 2)。右折している時間よりも直進中の時間の方がはるかに長いことをイメージすると,右折は歩行者事故のリスクが高いシーンであると推測される。右折時歩行者事故についてはAピラー周りの視界の影響もあることがわかってきている(15)。Fig. 1 Trend of Pedestrian Head Protection Scorein the JNCAP3.歩行者事故データ3.1事故データ(1)日本日本においては,警察に届けられた人身事故全ての情報が各都道府県の道府県警,警視庁から警察庁に集められる。その後,交通事故総合分析センター(ITARDA:Institute for Traffic Accident Researchand Data Analysis)で,国土交通省管轄の車両型式等の車両情報と付き合わせてデータベース化される。日本のマクロ事故データは,人身事故が全て網羅されていること,車両型式とのリンクが取れていること,分析可能な項目数が多いことなどのアドバンテージがあり,統計的に分析できるマクロ事故データとしては世Fig. 2 Pedestrian Accident for Vehicle Maneuverand Degree of Injury傷害程度別に直進,右折,左折の比率を見たグラフ* AIS:Abbreviated Injury Scale,簡易傷害スケール(10)** HIC:Head Injury Criteria,頭部傷害基準―162―