ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)高速域を含んで有用であることも確認できた。Fig. 13 Relationship between PHPS and the Numberof Fatally Injured Pedestrian per 10,000 RegisteredVehicles (Going-Straight, in Case Where HumanBody Collided with Vehicle Body, under the Condition ofDanger-Cognitive Velocity that is over 40km/h)5.歩行者頭部保護性能の市場価値歩行者頭部保護性能は,頭部を模擬したヘッドフォームを用い,衝突エネルギーの吸収の良否をみるものであるが,今回の分析では傷害部位を特に頭部に限定していない。それでも上記のような関係が見られたということは,実際の市場事故時には,衝突エネルギーの吸収良否は頭部に対してのみでなく,人体のその他の部位に対しても効果を発揮し傷害を発生しにくくしていると推定される。実際の商品開発の際には,重量やコストの制約条件等難しい課題も解決させ,かつ,デザインとの両立も図り,高い安全性能を目指している。CX-5(Fig. 14)のJNCAP歩行者頭部保護性能は3.46点と高得点を達成しており,万一の事故時に歩行者への加害性が低く抑えられていると推定できる。今後,市場での検証を行っていきたい。6.事故分析の活用方法実際の市場では,衝突速度,衝突相手,乗員,歩行者の性別,年齢,体格のような条件は非常に広い幅を持つ。そのような幅広い条件を全て加味しても,事故や傷害を低減できる提案をすることが事故分析業務の目的の一つとなる。事故分析を含む安全開発プロセスは次のようになる。(1)さまざまな視点で市場事故全体をマクロ的に分析し,注力すべき事故領域や事故シーンを絞り込んで特定する。(2)その事故や傷害へ影響がある性能,指標を統計的に明らかにする。データマイニングの一種ともいえる。(3)事故や傷害発生のメカニズムをミクロ事故データや実験,CAEなどを用いて解明し,対策を検討する。(4)再びマクロの視点から,その対策が市場全体に対してどのような効果をもたらすかを推定する。(5)技術開発,商品開発を行い,対策を商品に織り込む。(6)対策の効果を市場の事故データを分析して検証する。このような地道な研究開発を行いながら,究極的に目指す姿は交通事故がゼロである。もちろん,そういった状況に近づけば,交通事故を統計的に分析することはできないが,我々の使命は事故分析をすることではなく,事故や事故時傷害を限りなくゼロに近づけることである。7.まとめ今回の事故分析では,直進時の死亡事故に着目し,歩行者頭部保護性能が歩行者事故時に傷害低減効果を発揮していることを統計的に明らかにすることができた。また,マツダがこれまで培ってきた事故分析技術,その活用方法についてまとめた。もちろん,最初に述べたように,歩行者事故低減のためには人,環境,クルマ等その他のさまざまな取り組みも必要である。マツダとしても自らクルマを改善し続けるとともに,警察や国土交通省,日本自動車工業会,あるいは世界中のさまざまな機関,自動車・部品メーカなどと協力しながら,世界の道路交通安全の向上に取り組んでいきたい。Fig. 14 CX-5参考文献(1)警察庁交通局:平成24年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について,p.9(2013)―166―