ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)段としては,シートやステアリングホイールの調整範囲,ペダルやメータ,シフトレバーの配置,前方視界(上方/下方)の確保などがある。一方,快適なダイナミック走行への欲求の高まりや,空力,衝突などから自動車に求められる性能要求の多様化,また,デザイン的訴求力の高度化などに応えるべく,車両の構造や形状も年々変化している。このため,従来からの設計方法が,実際のドライバの使用実態に合っているか,運転姿勢や各操作機器についてドライバが十分満足しているかを検証するため,主要市場において数十名規模の調査を行った。なお,本稿の調査対象は,シートとステアリングホイールの位置,及び主観評価である。2.運転操作機器の設計方法マツダにおける従来からのドライバ着座位置の設計方法は以下のとおりである。なお,ドライバ着座位置は,国際標準である米国自動車技術会(以下SAE)が定めるヒップポイント(以下H.P)で定義する(1)。H.Pは,人体の胴部と脚部の回転中心である。最初に,ドライバの上下位置について,アクセルペダルを操作する足のかかとを置くフロアの高さ位置を基準に,まず代表体格のH.P高さを決める。代表体格はSAEが定める大柄米人男性(身長95%ile)とする。この際にH.P高さは,商品企画の観点から,車両の性格などを考慮して決める。次に,ドライバの上下位置について,小柄乗員の前方下方視界目標から,小柄乗員のH.P高さを定める。小柄乗員は,大柄乗員に比べ座高が低いため,大柄乗員ほどに前方下方の路面が見えない。このため,大柄乗員の下方視界量にできるだけ近くなるよう,小柄乗員のH.Pを,大柄乗員よりも高い位置に決める。この考えは自社独自のものであり,国際標準であるSAEが定めるH.Pには上下位置の定義はない。なお,この上下位置の実現方法は,シートスライド角度を前上がりに設計し,シートを前方にするほど着座位置が高くなるようにすること,及びシートリフタを設定し,シートを上方へ調節可能とすることである。ドライバの前後位置については,SAEが定めるアクセルペダルの足の拇指球位置(以下BOF)を基準に,快適な足首角と膝角の範囲,及び上述したH.P上下位置,の全てを満足する位置を割り出して定める。その結果,人体寸法の大きい乗員は車両後方寄りに,小柄な乗員は車両前方寄りに着座させることになる。一方,ドライバのトルソ角度については,市場母集団の分布が広いことが報告されているが(2),市場母集団の平均値を想定した設計基準角度はフロアからのH.P高さから定めている。つまり,着座姿勢における各関節の快適な角度範囲は,H.Pの高低によらず一定であるため,H.Pが低い車両では,高い車両よりもドライバを後傾姿勢とし,その結果トルソ角度を大きくする。以上により,ドライバH.Pの上下と前後位置,標準的なトルソ角度を定めることで,シートスライドの角度,シートスライド量とリフタ量,及び設計基準シートバック角度を定める(Fig. 1)。更に,その時点でドライバの肩の位置を推定することができるため,その肩位置から,快適な腋角と肘角の範囲を満足するように,ステアリングホイールの上下,前後の調整範囲,及びシフトレバー位置を定める。Lower visibilityfor tall personEye point targetfrom small to tall personDesigned torso angleH.P height for small person〃for tall personH.P horizontal distance for small person〃for tall personFig. 1 Seating Accommodation Decision Method3.実験方法3.1実験参加者実験参加者として,日常的に自動車を運転する男女46名(20~50歳)を集めた。国別の内訳は,日本16名,ドイツ15名,米国15名である。実験実施に先立ち,データ収集の目的,内容などについて説明を行い,参加者全員のインフォームドコンセントを得た。参加者の体格情報をTable 1に示す。表中,BMIとは体重kg÷身長m2で算出される肥満度の指標である。世界保健機構は,BMIが18.5以上25未満を標準体型,30以上を肥満体型と定義している。Table 1 ParticipantCountrynHeight (cm) BMI ( kg/mMean S.D. Mean S.D.)JPN16172.3±10.821.9±3.4DEU15175.7±10.726.2±4.2USA15178.7±9.925.0±6.13.2実験車両実験車両は,3か国ともにセダンタイプの同一車種である。日本は右ハンドルMT車,ドイツは左ハンドルMT車,米国は左ハンドルAT車であり,また,日本とドイツのシート位置調節は手動式,米国は電動式であるが,調査対象操作機器の配置などは基本的に同一のものである。実験車両の詳細をTable 2に示す。―174―