ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報ける下肢長(H.Pから足首までの長さ)は,日本が814mm,ドイツ836mm,米国847mmであり,ドイツ,米国と比べ日本は短い。SAE基準は米国の人体寸法を基にH.P前後位置を定めているため,米国とそれに近いドイツはSAE基準に一致した一方,日本は前寄りとなったものと考えられる。この考えを検証するため,身長から推定した下肢長とH.P前後位置の関係を調べたところ,両者の間には有意に正の相関が確認でき(r=0.87, p<0.01)(Fig. 9),相関係数は身長とH.P前後位置の間より強かった。よって,ドライバの着座前後位置は,直接的には身長よりも下肢長に依存するものと考えられる。3194RMSeat fore/aft position■:JPN,▲:DEU,●:USA2876 FM500 0 600 700 800 900 1000Leg length (mm)Fig. 9 Correlation between Participants’Leg Lengthand Seat Fore/Aft Position(2) H.P上下位置Fig. 5より,身長が低いほどH.P位置を高く調整する傾向が確認できた。これは座高の低い小柄乗員が前方下方視界を確保しようとする要求を反映したものと理解でき,設計の考え方とも一致する。ただし,その量が予想どおりであったかについては,前方下方視界との関係を調べる必要があり,5.1(4)で詳しく調べる。(3)トルソ角度トルソ角度は,米国が設計値に一致した一方,日本が身倒し,ドイツが身起こしとなった。過去の社内調査(日本93名,独米42名)においても同傾向の結果が得られたことから,再現性は高いものと考えられる。国際標準であるSAEには,市場ごとのトルソ角度の差は定められていないが,車両の仕向地ごとによりドライバ実態に合った設計を行う上で重要な情報と考える。(4)シート可動範囲に対する着座位置シート可動範囲におけるドライバ着座位置の分布は,スライド中間において下寄り傾向である。その要因を考察するため,身長を横軸に,設計時に設定した目の位置(Fig. 1)に対する実験参加者の目の上下位置を縦軸に取りプロットする。なお,参加者の目の位置は体格,H.P前後/上下位置とトルソ角度の調査結果を組み合わせて算出した。その結果,中柄体格(170~180cm付近)において,リフタを上方に調節することで目の位置が上方となり,より前方下方の路面が見えるようになるにもかかわらず,リフタを下方に調整しているドライバが多いことが分かった(Fig. 10)。大柄体格の主観評価において,前方上方視界,及びヘッドクリアランスをより確保したいコメントがあることを把握している。Eye point up/down positiondifference (mm)40200-20■:JPN,▲:DEU,●:USA-40140 0 150 160 170 180 190 200Height (cm)Fig. 10 Correlation between Participants’Height andEye Point Up Down Position5.2不満評価不満内容の現象ごとに,不満の要因を考察する。以下考察では,不満があった12名を識別するため,Table 3のName欄の記号を( )内に示す。(1)シートスライドの後方調節量不足不満指摘者3名のうち,2名(F,L)は身長が高すぎ,実験車両の運転操作機器の設計に用いた乗員体格の範囲外であった。残る1名(C)の特徴は,トルソ角度が設計基準比マイナス9°と極端に身起こしであった。この値は,比較的身起こし傾向が強いドイツ人にあっても2σを超えており,95%保証の外であることが確認できた。不満指摘者Cの身長から考えると,シートスライド調節位置は後方すぎて,腰はシートバックにしっかり届いていないものと推察されるが,シートバックを起こしているために肩付近は支持され,運転が可能なものと思われる。(2)シートリフタの下方調節量不足不満指摘者3名のうち,2名(F,K)は身長が高すぎ,実験車両の運転操作機器の設計に用いた乗員体格の範囲外であった。実際に,1名(K)は前方上方の視界が悪いためシートをもっと下げたいとコメントしており,身長の高さが直接的要因となったことを裏付けている。残る1名(G)は,下方調整不足のコメントとともに,サイサポート不足をコメントしていることから,―177―