ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)シートを下げることでより十分なサイサポートを得たいものとみられた。ただし,実験車両(米国)は,クッションチルト付きであるにもかかわらず,チルトを最下端のままとしているため,調整機器を使い切れていない結果であるともいえる。(3)ステアリングテレスコの前方調節量不足不満指摘者1名(A)は,身長が低すぎ,実験車両の運転操作機器の設計に用いた乗員体格の範囲外であった。(4)ステアリングテレスコの後方調節量不足不満指摘者4名のうち,1名(L)は身長が高すぎ,実験車両の運転操作機器の設計に用いた乗員体格の範囲外であった。また2名(B,I)はヘッドレストが近すぎる窮屈さを解消するためにシートバックを倒した結果,ステアリングホイールが遠くなったとコメントしている。この不満から,シートの部分的な不満が着座姿勢に影響を与えることが分かった。残る1名(J)は,サイサポート不足を解消するためシートスライドを後方にしようとしたが,ステアリングホイールが届かなくなるため諦めたとコメントしている。記録した着座姿勢からは,スライドは身長の割に前寄り傾向で,トルソも起こし気味であることから,ステアリングホイールが届かないとは考えにくく,論理的な解釈が困難であり,追跡調査を行っている。(5)サイサポート不適不足指摘者3名,過剰指摘者名であった。まず不足について,2名(G,J)は先に述べたとおりである。残る1名(E)は,身長が保証意図をわずかに超え,また,BMIも肥満に分類されるレベルであることから,シートスライドは最後端にすべきであるが,実際の選択位置は身長の割にかなり前寄りであった。このことが,サイサポート不足を招いていると考えられる。次に過剰と指摘した1名(H)は,身長の割にシートスライドをかなり後寄りにしている。シートスライドを前寄りにするとサイサポートは弱くなるため,調整機器を使い切れていない結果であると考えられる。(6)視界不満指摘者3名のうち,I,Kは先に述べた。残る1名(D)は,ボンネット前方をみるためにシートリフタを上方にしようとしたが,ヘッドスペースが足りなくなるため諦めたとコメントしている。記録した着座姿勢からは,身長の割にシートスライドを相当に前寄りとしている。身長に相応しいスライド位置まで後方寄りにすれば,頭上のスペースもより大きくなり,全てが改善方向になると推測されるが,コメントを確認すべく追跡調査を行っている。以上より,不満内容ごとの考察から導いた不満要因を,以下のとおり分類する。・体格保証意図の範囲外:4名(A,F,K,L)・特殊な座り方(トルソ角の起こしすぎ):1名(C)・ヘッドレスト配置不良:2名(B,I)・シート調整を使い切らず:3名(E,G,H)・原因未解明(追跡調査中):2名(D,J)このうち,体格保証については設計意図により制御可能である。また,2σを外れる特殊な座り方についても,体格保証と同様に,保証範囲を大きく取ることが考えられるが,そのために相反するデメリットを明らかにして判断をする必要がある。ヘッドレスト配置については,衝突(後突)時のむち打ち防止性能との両立を考慮して,満足ゆく配置レベルを把握することで,改善につなげることが可能である。また,シート調整を使い切れていないドライバに対しては,何らかの方法で適切な位置を選んでもらうことにより,改善を図れる可能性があるものと考える。最後に,論理的な解釈が困難であった2名については,更に詳細な姿勢調査と聞き取りを行っている。6.まとめ今回,従来からの運転操作機器の設計方法が実際のドライバの使用実態に合っているかを検証した。その結果,着座の前後位置とトルソ角度の設計方法は実際のドライバの使用実態に合っていることを確認できた。その一方で,着座上下位置については,シート可動範囲に対して中柄体格に下寄り着座傾向が見られた。また,着座前後位置とトルソ角度について,地域差を把握した。国際標準であるSAEが定めるH.Pには,上下位置推定方法の定義はなく,また着座前後位置とトルソ角度について地域差の視点はない。今後,更なる要因調査を行い,SAEへH.Pの定義の提案を検討し,また,よりドライバの実態に合った運転席の設計を行っていきたい。参考文献(1) SAE : Driver selected seat position, SAEJ1517(2011)(2) Miriam A et. Al., : ATD Positioning Based onDriver Posture and Position, 42nd Stapp CarCrash Conference Proceedings, 337 (1998)略号SAE:Society of Automotive EngineersBMI:Body Mass Index(体重÷身長2 )FM, RM:Front most, Rear most―178―