ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31
- ページ
- 188/228
このページは マツダ技報 2013 No.31 の電子ブックに掲載されている188ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは マツダ技報 2013 No.31 の電子ブックに掲載されている188ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
マツダ技報 2013 No.31
No.31(2013)マツダ技報内外装領域の部品開発において,金属と比べて樹脂は熱に対する変形・強度問題に検討・配慮を必要とする。鋼板では常用温度域で材料物性値はほとんど変化せず熱伸びも小さいが(線膨張係数は多くの場合樹脂の1/3から1/10程度),樹脂では温度に対する材料物性変化が顕著で熱伸びが大きい。例えば代表的物性値のヤング率は,100℃では室温の1/5程度にまで低下するものも見られる。また線膨張係数に10倍程度の差があるということは,温度によって金属部品と樹脂部品との間で相対的な位置変化が生じ,変形・異音・干渉・見栄え等の原因となる。このため,開発の早い段階から変形状態を正確に把握して固定方法や隙・干渉に配慮した設計を行う必要がある。加えて樹脂では加熱・冷却サイクルを繰り返すと初期状態から長さが小さくなる「熱収縮」現象が観察されるため,熱収縮量も考慮する必要がある。しかし一般的な線膨張係数を定数として扱う熱応力解析では,「熱収縮」現象をとらえられないという問題があった(1)(2)(3)(4)。そこでリフトゲートトリムに使われているポリプロピレン樹脂について試験片による特性試験を行い,まず「熱収縮」現象を明らかにした。そして分析および計測結果に基づき線膨張係数を単なる定数から関数表現とし「熱収縮」現象をとらえられるようにした。更に従来から指摘されていた樹脂部品製造時の残留応力(5)を考慮し,リフトゲートトリムの平均残留応力を推定することで熱収縮量を精度良く机上予測できるようにした。以下にその概要を述べる。2.材料試験による現象解明2.1熱変形に影響を及ぼす材料特性樹脂部品の熱変形は,①熱膨張差により生じる熱応力による塑性変形,②高温保持に起因するクリープ変形,③樹脂の結晶再配列および分子配向緩和による「熱収縮」の3因子により生じると考えられる。そこで,弾塑性特性に加えクリープ特性および熱収縮特性を考慮することが必要である。2.2材料特性の測定(1)クリープ特性JIS K7115に準拠し25℃,80℃,100℃で試験を行った。各温度につき3水準の荷重を負荷し,測定を行った。80℃の結果をFig.2に示す。(2)熱収縮特性異方性を考慮するため,樹脂の流れ(MD)方向/流れと直角(TD)方向それぞれの試験片(φ5×10)を作成し,熱機械分析装置(Thermomechanical Analyzer)を用いて,試験片を加熱・冷却した際の変形量を測定した。測定は室温→120℃→-60℃→室温の加熱・冷却を3サイクル繰り返した。その1例としてMD方向の測定結果をFig. 3に示す。1サイクル目の昇温時のみ異なる変形を示し,それ以降は同じ変形を繰り返している。更に,1サイクル目の最高温度を変えて収縮量を測定した結果をFig. 4に示す。これらのことから,収縮現象は初回昇温時の温度に大きく依存すると考えられる。Fig. 5にMD方向およびTD方向の収縮量を示す(N=4の平均)。本供試材ではMD方向の収縮量がTD方向の収縮量よりも大きいことが分かった。10000010000Creep modulus(MPa)Ratio of expansion/shrink10004.5MPa100108MPa6MPa1110100100010000100000Time(s)Fig. 2 Result of Creep Tests at 80℃0.021cycle0.0152cycle3cycle0.010.0050Start-0.005-0.01-0.015-100-50050100150Temperature(℃)Fig. 3 Thermal Expansion & Shrink in Heat CycleShrinkage ratio(%)0.40.30.20.10-0.10 50 100 150Maximum temperature(℃)Fig. 4 Relationship between Maximum Temperatureand Shrinkage―181―