ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

ページ
191/228

このページは マツダ技報 2013 No.31 の電子ブックに掲載されている191ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

マツダ技報 2013 No.31

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)Fig. 12は計算開始時の室温状態であり,全域緑色(変形なし)を示している。Fig. 13は,Fig. 12の室温状態から温度を上げ,Table 1に示す車種ごとの最高温度に達した時点の状態を示す。最後のFig. 14はFig.13の車種ごと最高温度から室温に戻した時の状態を示す。Fig. 14を見ると,高温から室温に戻した状態では,初期状態に比べて左右部分が内側に移動する状態を示しており,熱収縮が実部品でも解析上とらえられていることを示している。C車の場合で左右それぞれ1.25mm以上の移動が観察されている。Table 2には,各測定位置における熱収縮量の解析値および実車で計測された収縮量を100%とした場合の比率を示している。解析で確かに熱収縮がとらえられているものの,その熱収縮量は9%~95%とばらついており11点平均でも55%となっている。3章の簡易形状での結果も,計算結果は実測値に対して75%と少なめの予測値となっており絶対値予測には不十分である。Table 2 Heat Shrinkage Predicted by CAEVehicleLocationofEvaluationActualTests(mm)CAEPrediction(%)①4.71.225%A②3.82.052%③5.53.259%B①1.51.068%①3.70.39%②3.9 2.3 58%C③3.8 3.2 83%④2.92.795%①2.51.146%D②1.51.176%③2.50.833%Mean Value55%4.2製品製造時の残留応力の考慮前節の結果を受けて,線膨張係数を異方性とし温度とサイクルの関数として考慮することに加え,従来その影響が十分検討されていなかった射出成形による製造時に部品内部に残る残留応力(5)の考慮と,その値の適値同定を次に行った。製造時の部品内部に残る残留応力値も型法案・製造条件等,また部位によって異なると考えるのが妥当であり,従ってこの残留応力を厳密に把握するには,流動方向と同様に樹脂流動解析が必要となるが,残留応力についても今回簡易な検討が可能となるように,射出成形されたリフトゲートトリム内には一様に面内引張応力が生じる(せん断応力は0)と仮定した。そして残留応力値については,塑性変形が発生するような大きな値ではなく,線形変形範囲の値であると考えられることから,1から5MPaまで変化させA車からD車の4車種に関して最も再現性の高い残留応力値を求める手順を取った。Table 3には,一様残留応力値を初期状態としてモデル全体に付加して熱収縮解析を行って得られた熱収縮量の実測値に対する比率を示す。VehicleTable 3 Effect of Added Residual StressLocationofEvaluationResitualStress0MPaResidualStress1MPaCAEORTHO TROPICResidual ResidualStress Stress2MPa 3MPaResidualStress4MPaTable 3より,リフトゲートトリムについては3MPaの残留応力を付加するとA車からD車の4車種11か所平均として最も実測に近い予測値(実測値の103%)が得られた。詳細に見ると車種や評価位置により最適な残留応力値が1MPaから4MPaの範囲でばらつきを持っていることがTable 3から確認できる。これらは解析条件として付加した温度条件(一様分布)や局所的な線膨張係数の方向定義の誤差,また車種による形状・大きさの差から型設計/製造条件(保圧・保圧時間等)が異なる結果として平均残留応力にばらつきがあることによるものと考える。また3MPaという値は,リフトゲートトリム用の一般ポリプロピレンで考えると室温での降伏応力(13MPa)より低く線形範囲内で,ひずみ値は0.22%に対応している。なおこの平均残留応力値は,部品によって異なると考えるのが妥当であり,ピラートリムなどへの適用では同様手法により同定・決定することが必要となる。4.3残留応力の影響一方Table 3からは,残留応力値が1MPa変わるだけで熱収縮量が15%程度変化しており,熱収縮に対する残留応力値の影響・感度が大きいことも分かる。Fig. 15とFig. 16に,11点の評価位置における最高温度時伸び量および熱収縮量と,残留応力との関係を示す。ResidualStress5MPa①25%34%44%54%66%77%A②52%67%81%96%110%125%③59%68%78%87%97%107%B①68%94%119%144%169%194%①9%18%27%35%43%52%C②58% 72% 86% 100% 114% 128%③83% 96% 109% 122% 135% 148%④95%109%122%136%150%164%①46%70%95%120%145%170%D②76%99%123%146%168%187%③33%52%71%90%107%123%Mean Value55%71%87%103%119%134%Elongation (mm)1086420Relation between Residual Stress Added and Elongation at theMaxmum TemperatureResitual Stress0MPaResidual Stress1MPaResidual Stress2MPaResidual Stress3MPaResidual Stress Residual Stress4MPa 5MPaFig. 15 Elongation at the Maximum TemperatureA①A②A③B①C①C②C③C④D①D②D③―184―