ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報取り外す際に端子部がちぎれ,ハーネスが残りにくい構造にしている。また,ASR重量の多くを占める樹脂においても,リサイクルしやすい材料を採用している。例えば,ATシフトノブにはオレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO)を採用し,ダッシュインシュレータは,遮音材を同素材の熱可塑性フェルトに統一している。本稿では,これらの中から特に注力しているバンパのライフサイクル設計について紹介する。2.ライフサイクル設計に関する要件資源効率利用設計には,ライフサイクルをベースとしたシナリオ(以下ライフサイクルシナリオ)が重要であり,このシナリオと整合させた製品の構造や形状を設計することが不可欠である(1)。廃車の場合,製品の回収後に,事前解体によって部品を回収リユース,リサイクルするシナリオと,シュレッダによる粉砕後のASRから,素材を分別することによってリサイクルを行うシナリオなどが考えられ,そのシナリオによって製品設計の要件は異なる。例えば,前者の場合は解体容易性の設計が重要になり,後者の場合は粉砕・分別に適した材料を使用することが重要になる。このシナリオは国や製品とその部品によって異なり,また乗用車の平均ライフサイクルは約13年であることから,設計時点で決定することは難しい。そのため,さまざまなシナリオを想定して,設計に織り込む必要がある(2)。Fig. 1に,資源効率のヒエラルキーを示す。このヒエラルキーは一般的な環境影響の程度によって階層化されており,上層ほど優先すべきとしている。最も優先すべき事項は,使用量を減らすリデュースである。続いて優先事項は,部品をそのまま再使用するリユース,少し修理して再使用するリファービッシュ,一部の部品を新品と交換して再利用するリマニファクチャー,材料としてのリサイクルの順となる。また,熱回収が,廃棄よりも優先すべきであるとされている(3), (4)。ReduceReuseRefurbishRemanufactureRecycleEnergy RecoveryDisposalFig. 1 Hierarchy of 3R(Drawn Based on Erik Sundin, et al. (3) )このヒエラルキーを製品のライフサイクルの中で示したのがFig. 2である。リデュースは,設計,資源供給,製造などさまざまなライフサイクルステージで可能であるが,本稿では設計時に軽量化等によって行うものを示している。マツダは,1990年代からバンパを事前解体によって部品を回収し,リユース,材料リサイクルするシナリオに基づく要件により,ライフサイクル設計を行ってきた。この要件は,バンパを含むASRから素材を分別するシナリオにも整合するものと考えている。バンパのライフサイクル設計のリデュース,リユース,リサイクルそれぞれの視点で説明する。ReduceRecycleRemanufactureRefurbishReuseDesignResourcesProvisionManufacturingLogisticsMarketing/SalesUsageServiceEnd of LifeFig. 2 Product Life Cycle(Drawn Based on Lee Hui Mien, et al. (5) )3.リデュース設計:省資源・省エネルギーリデュースとは,環境負荷や廃棄物の発生を抑制するために無駄・非効率的・必要以上な消費・生産を抑制あるいは行わないことである。(1)バンパの機能バンパの機能は,外観デザイン,燃費向上,安全性の大きく分けて3つがある。外観デザインとして,バンパはまさしく車の“顔”の一部であり,優れた形状や色が求められる。燃費向上には,バンパの形状による空力性能改善や開口部からの冷却性能向上が求められる。また,安全性には,軽衝突時に歩行者を保護し,機能部品(ランプ類やウォッシャタンクなど)を保護する機能が求められる。これらの機能と両立できるようライフサイクルを考慮した設計をすることが重要である。(2)新しいバンパ材料開発(6), (7)マツダは,車両の軽量化を実現する自動車部品用の樹脂材料を,日本ポリプロ(株)と共同で開発した。バ―187―