ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31
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マツダ技報 2013 No.31
マツダ技報No.31(2013)薄肉軽量化を実現しコストアップさせない工法への進化が課題であった。本稿では,そのダイカストを紹介するとともに課題解決のキーとなった金型技術について詳述する。発生しないダイカスト製品を生産することができる(Fig. 2)。2.超高速高真空ダイカスト高精度薄肉のシリンダブロックを安定品質で製造するために新しいダイカストの開発を行った。その技術のポイントは「最適充填」と「安定化」である。「最適充填」とは,アルミ溶湯を高速射出によりキャビティの隅々まで溶湯の金属凝固が始まらない状態で充填完了させる技術である。これにより,溶湯温度が低下することで発生する湯境や湯廻り不良などの充填不良を防止するとともに,充填完了直後に付加される鋳造圧力の伝達効率を高めることで内部品質の優れた製品を得る。Fig. 1に射出プロファイルを示す。Fig. 2 Target Casting Condition一方,「安定化」は鋳造条件を理想状態に維持する技術で鋳造条件センシングと金型保全システムからなる。前者はキャビティ内の減圧度と鋳造圧,金型温度などをリアルタイムでモニタリングするもので,ショットごとに理想の鋳造条件にあることを確認することで品質のばらつきを抑制する。後者は適切なメンテナンスによって理想の金型状態を維持するシステムである。これらにより安定した品質での生産を実現している。駆け足ではあるが,以上が本稿で紹介する金型技術の前提となる工法の概要である。3.高精度薄肉ダイカストを実現する金型技術Fig. 1 Concept of Ideal Shot Profile縦軸が射出速度で横軸が充填時間である。従来工法は,射出速度が低いため充填時間が長くなる。そうなると,射出口から離れた部位では,溶湯が到達した時の温度(以下,「充填温度」)が,凝固の始まる初晶温度以下に低下するため充填不良が発生しやすい。また,ダイカストでは主に鋳巣を潰す目的で充填完了直後に射出口から圧力(以下,「鋳造圧」)を付加するが,凝固が始まった部分では鋳造圧の伝達が不十分になるため,巣欠陥が発生しやすくなる。そこで,射出速度を高速化すると同時に,高速射出時に充填抵抗となる背圧の発生を抑制するために,キャビティ内をゲージ圧で-90kPa以下に減圧する技術を開発した。これにより充填時間が短くなり,キャビティの隅々にまで凝固開始前の温度で溶湯が到達するため充填不良が発生しない。また,凝固が始まってないため鋳造圧の伝達効率が改善され,巣欠陥の発生が抑制される。加えて,減圧実施により,キャビティ内のエアが排出されていることからエア巻き込み不良をも改善することができる。これらの相乗効果により,ほとんど巣のこれまで述べたように,ダイカストの鋳造工程はその全てが金型内で進行する。従って,この革新的工法を実現するためにはそれに適した金型技術が必要である。この考え方を図式化したのがFig. 3である。Fig. 3 Scheme of Precision Die Cast高精度な製品を実現するための金型設計は,製品開発の初期段階から始まって,最適充填と安定化の具現化,金型メンテに至るまで全ての領域をカバーする重要な役割を担っている。これは金型技術の目的を「金型を作る」ことだけでなく「お客様価値の提供」と位置付けているからである。この考え方に基づいて,高精度ダイカストシリンダブロックを実現するために確立した施策をTable 1に示し,主だった施策について後段に詳述する。―198―