ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

No.31(2013)マツダ技報Table 1 Action on Die Design3.1製品設計領域の施策高精度で薄肉軽量なシリンダブロックをコストアップすることなく生産する上で,最も重要なポイントは「いかに生産性に優れた製品設計を行うか」にある。いかに革新的な製造プロセスを適用しようとも原点である製品形状に問題があると機能/品質/コストのどこかに問題が発生する。そこで製品開発に参画し機能と生産性を両立させる活動を展開した。(1)肉厚マネジメントシリンダブロックは,リブやフランジのような構造部分,部品締結のためのボス,直接機能を担うシリンダや冷却経路などから構成され,それらを結んでいる壁状構造が肉厚形状部である(Fig. 4)。化しやすいが,同時に流動距離の長い部位への充填性も考慮する必要があるため,最終的には全体の充填バランスを検証しながら肉厚を決定する必要があり,これには汎用流体解析ソフトを用いた。このようにして製品性能と生産性を両立する製品肉厚を提案した。この時の最適射出速度は6.6m/secである。(2)生産性改善提案の実施次は,製品形状全体を評価して鋳造品質を阻害する部位の改善を行う。引け巣,湯廻り不良,焼き付きなど,ダイカストで発生する鋳造不具合をコンピュータ・シミュレーションを用いて事前検証し,問題発生部位が明確になれば対策形状を考案し提案する。Fig. 5は,シミュレーションによって引け巣発生が懸念された部位の製品形状を変更した事例である。Fig. 5 Improve Shape Based on Simulation軽量化を目的とし肉厚形状部の薄肉化目標を設定し,最適充填を前提に,射出口(ゲート)から各肉厚形状部分までの肉厚バランスをどうすべきかを提案するのが「肉厚マネジメント」である。品質のキーを充填温度と考え,それを,上述の通り,初晶開始温度以上とするための各領域の最小肉厚と最適射出速度を同時に提案した。まず,鋳造シミュレーションを用いてゲートから各肉厚形状までの流動距離を算出,この距離ごとに基準の充填温度を確保するために必要な肉厚と射出速度(=充填時間)を計算する。ダイカストで用いられる最適充填時間の式としてF. C. Bennett式やG. Ulmer式が知られるが(1) Fig. 4 Outline of Cylinder Block,我々は溶湯から金型への熱伝達が支配的と考えた独自の簡易式を用いて初期検討を効率的に進めた。一般的に,流動距離の短い部位ほど薄肉3.2金型設計領域の施策製品機能と生産性を両立させる一方で,そこで明確になった要件を反映させながら金型設計を行う。また,金型への要求機能実現のみならず,生産中もそれを維持するための金型構造,材質,製作方法を決定する。(1)キャビティ肉厚寸法の高精度化ダイカスト金型は鋳造性を確保するために鋳造時には100~250℃に維持されるのが一般的である。この温度は鋳造サイクルに伴い一定の範囲に収束するが,この温度分布に応じた熱変形が発生し金型を変形させる。この変形は製品成形部位でも最大で0.3mmに達し,製品肉厚の10%を越えるバラツキ原因となっている。加えて,これが機械加工面で発生すると黒皮残りとなるので,これを避けるために多くの取り代が必要となり,コスト上昇要因となる。従って,高精度な製品を実現するためにはこの金型変形を考慮して,稼働状態で狙いのキャビティ肉厚寸法になるように金型設計する必要がある。そのために,金型に発生する温度分布を鋳造シミュレーションで求め,これとFEM熱構造解析との連成により鋳造時の金型変形量とキャビティ肉厚変化量を算出した上で,この変化をキャンセルするように金型に形状補正を実―199―