ブックタイトルマツダ技報 2013 No.31

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マツダ技報 2013 No.31

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概要

マツダ技報 2013 No.31

マツダ技報No.31(2013)施した。Fig. 6は解析によって求めた肉厚変化量を製品形状にマッピングしたもので,例えば,赤色領域は狙いの製品肉厚に対してキャビティが0.3mm薄くなる部分である。このような領域に対しては金型製作時に補正を加えた。と比較してよく一致して評価できている。これを金型設計に反映するだけでなく,焼き付き部位に製品離型時に加わる引っ張り荷重を付加することで鋳抜きピン寿命を推測するシステムを構築し,交換周期の設定などに活用している。Fig. 6 Improve Shape Based on Simulation(2)金型焼き付きシミュレーション焼き付きとは溶湯が金型と融着する現象をいう。これが発生すると,製品離型時に融着部が金型に残り製品欠肉を起こすとともに型表面も激しく損傷する。そのため,焼き付きが発生しにくい(=局所的に温度上昇しない)製品形状を提案するか,金型冷却を最適化して融着を防止する必要がある。そのイネーブラとして焼き付きシミュレーション技術を確立した。焼き付きの予測方法として,鋳造サイクルの特定のタイミングにおける,製品,または,金型の温度を評価指標とする方法が一般的に知られているが,この方法では,ボス部や鋳抜きピンなど,充填完了直後に温度上昇した後,急速に冷却されるような部位に発生する焼き付きが判定できなかった。このような現象をシミュレーションするためには融着メカニズムにのっとった計算を行う必要がある。そこで,融着をアルミ原子の鋼材中への拡散と考え,アルミ合金温度のチルタイム中の経時変化を評価基準とする解析方法によりシミュレーションを可能にした(Fig. 7)。Fig. 8 Result of Die Soldering Simulation(3)溶湯激突による金型損傷評価最適充填のためには高速射出を行う必要がある。それにより凝固開始前の溶湯が充填するので,従来工法に比べると鋳造圧を下げられる。従って,金型が受ける負荷は鋳造圧より,射出溶湯に起因するものが支配的になる。従来,ゲート通過溶湯の流速は40m/sec以下に抑制していたが新工法では60m/secに達し,比重の軽いアルミ溶湯とはいえ運動エネルギーは大きい。そのため,溶湯流による金型へのダメージを事前に評価し,製品形状や金型構造に対策を織り込んでおく必要がある。このような損傷評価は実際に生産しながら長い期間かけて評価する必要があったため,多くの無駄を発生させていた。そこで新たに射出溶湯による金型損傷をシミュレーションする技術を開発した(Fig. 9)。Fig. 9 Die Damage of Molten-Metal Filling ImpactFig. 7 Concept of Soldering SimulationFig. 8にシミュレーション実施例を示す。従来は評価が難しかった鋳抜きピンに発生する焼き付きも,鋳造ショットを重ねるごとに拡大していく様子が,実態鋳造シミュレーションから金型に衝突する溶湯の運動エネルギーを算出し,これと被衝突部位の金型温度(型材の高温強度を考慮するため)を変数にして,当該部位へのクラック発生タイミングを評価する仕組みである。―200―